セッション情報 一般演題

タイトル 156:

大腸転移が診断の契機となった血管肉腫の1例

演者 本田 邦臣(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学)
共同演者 隅田 頼信(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学), 樋口 奈緒美(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学), 金山 兼司(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学), 水谷 孝弘(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学), 吉永 繁高(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学), 板場 壮一(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学), 秋穂 裕唯(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学), 中村 和彦(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学), 高柳 涼一(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学), 神代 由美子(九州大学大学院医学研究院 形態機能病理学), 八尾 隆史(九州大学大学院医学研究院 形態機能病理学)
抄録 症例は68歳,男性.平成17年10月初旬より血痰が出現し,同年11月8日近医に入院.胸部CT検査にて両肺に多発結節影を認めた.入院中に黒色便を認め,貧血が進行したため上部消化管内視鏡検査を施行したところ,十二指腸下行脚にoozingを認め,クリッピングが施行された.同年12月4日頃より,発熱を認め,胸部X線上も肺病変の悪化を認めたため,精査・加療目的にて同年12月6日に当院呼吸器科に入院した.当院での胸部CT検査にて左肺尖部に慢性膿胸と充実性腫瘍の合併が疑われ,両肺野にスリガラス影を伴う多発小結節を認めた.気管支鏡検査では気管および両気管支に血液付着を認めるも明らかな病変を認めず,肺胞出血が疑われた.上部消化管内視鏡検査では十二指腸下行脚に発赤点,発赤粘膜の散在を認め,その1つより出血しており,内視鏡的止血術を施行した.その後,呼吸状態悪化したため,肺胞出血に対してステロイドパルスが施行され,呼吸状態は改善傾向を示した.消化管出血に対しては,絶食,輸血にて対処した.その後施行した腹部造影CT検査にて上行結腸内腔に造影剤の漏出を認め,同部位からの出血が疑われたため,下部消化管内視鏡検査を施行.回盲弁肛門側に径10mm大の発赤調隆起性病変を認め,出血を伴っていた.生検を行った後,内視鏡的止血術を施行した.横行結腸にも径10mm大の発赤調隆起を認め,中央に陥凹を伴っていた.また,頭部CTにて腫瘍内出血を伴う転移,腰椎MRにてL4, S2, S4 に転移を認めた.上行結腸病変の病理組織学的所見では,紡錘形あるいは多形性の異型細胞の充実性増殖を認めた.また異型性内皮細胞に裏打ちされた血管腔様構造も認められた.これらの細胞は,免疫染色でCD31および第VIII因子に陽性であり,血管肉腫と診断した.原発巣は左肺尖部腫瘍で,肺,脳,骨,大腸および十二指腸転移と考えられた.脳転移に対しては全脳照射を行い,化学療法予定であったが急変し,平成18年1月1日永眠された.剖検の承諾は得られなかった.今回我々は,消化管に転移し,診断に苦慮した血管肉腫を経験したため報告する.
索引用語 血管肉腫, 転移性腫瘍