セッション情報 シンポジウム2

タイトル S2-002:

超音波内視鏡下吸引針生検(EUS-FNAB)で確定診断し得た自己免疫性膵炎(AIP)の一例

演者 大内 二郎(株式会社麻生 飯塚病院 消化器内科)
共同演者 赤星 和也(株式会社麻生 飯塚病院 消化器内科), 伊藤 鉄英(九州大学 病態制御内科学)
抄録 [背景]AIPの診断に際しては常に他疾患との鑑別が重要となる。EUS-FNABは比較的安全に膵組織を採取することが可能であり、膵病変の病理学的な検討が可能である。今回我々はEUS-FNABにて病理学的にも確定診断をし得たAIPの一例を経験した。[症例]72歳、女性。2002年前医にてAIPによる膵腫大を診断されステロイドを投与されていた既往がある。しかし当時は内視鏡的逆行性膵管造影検査(ERP)や膵生検は施行していなかったため厳密には診断基準を満たしてはいなかった。ステロイド投与にて膵腫大は改善、その後はステロイドを漸減し経過観察をされていたが、2005年10月に膵のびまん性腫大、軽度の黄疸及び炎症反応が見られたことよりAIPの再燃が疑われ、2006年1月25日当科を紹介受診となった。自覚症状はない。既往歴や生活歴、家族歴でも特記事項はない。当科初診時の現症では腹部を含め異常所見を認めなかった。免疫学的検査ではIgG が2079mg/dlと高値を認めたが、抗核抗体及び抗リウマチ因子は陰性であった。腹部CTで膵のびまん性の腫大を認めたが明らかな腫瘤形成は認めなかった。入院後に施行したERPでは膵体部から尾部にかけて全体の約3分の2にわたって主膵管の狭小化を認めた。病理学的診断をつけるためEUS-FNABを施行した。採取検体からは悪性所見は認めず、リンパ球主体の炎症細胞および紡錐形細胞の増生を認めた。また免疫染色ではCD8陽性細胞が少数散見され、AIPに矛盾しないものであった。以上のことより、自己免疫性膵炎診断基準2002の3項目全てを満たしたことからAIPと診断、またその病歴から再燃したものと判断した。ステロイド投与による治療を開始し現在のところ経過は良好である。[結語]AIPを診断するにあたっては病理組織所見が得られれば診断はより確実なものとなる。EUS-FNABは少ないリスクで組織採取が可能な上正診率も高いため主に海外で普及しつつある診断手技である。本疾患が疑われる場合も膵癌との鑑別や免疫組織学的検討が可能であり今後積極的に施行すべき検査法の一つと考える。
索引用語 自己免疫性膵炎, EUS-FNAB