セッション情報 一般演題

タイトル 146:

退形成性膵管癌の一切除例

演者 溝江 昭彦(唐津河畔病院 外科)
共同演者
抄録 【はじめに】膵炎にて発症し、幽門輪温存膵頭十二指腸切除術で根治切除が可能であった退形成性膵管癌の一例を経験したので報告する。
 【症例】53歳、女性。上腹部痛、嘔気を主訴に当院を受診。血・尿アミラーゼ、エラスターゼ、リパーゼの上昇を認め、精査・加療目的で入院となった。腹部US・CTでは膵頭部に径2cmの腫瘤が存在し、膵体尾部の主膵管が拡張していた。腹部MRIではT1で低、T2で等密度を呈する径2cm大の腫瘤として描出された。ERCP上、ファーター乳頭部より3cmの部位で主膵管が途絶しており、腹部血管造影では軽度の腫瘍濃染像がみられ、門脈の圧迫像が認められた。上記より膵頭部癌と診断し、全麻+硬麻下に開腹手術を施行。開腹時所見では膵頭部に2cm大の腫瘤を認めたが、膵体尾部が硬化しており腫瘤の境界は不明瞭であった。幽門輪温存膵頭十二指腸切除術およびリンパ節郭清術を施行した。病理組織所見では、腫瘍細胞は多形性に富み多核巨細胞も多くanaplastic carcinoma, pleomorphic typeと診断された。周囲の膵組織は線維化と慢性炎症性細胞浸潤がみられ慢性膵炎の所見であった。郭清リンパ節には転移はみられなかった。術後は合併症なく順調に回復し、1年6ヶ月後の現在、再発の徴候を認めていない。
 【まとめ】膵癌のなかでも退形成性膵管癌は発見時に著明に進展している場合が多く、非常に予後不良とされる。本例は腫瘍により主膵管が閉塞し随伴性膵炎を起こしたものと考えられる。そのため比較的早期に症状が出現し発見に至ったことが、治癒切除となりえた一因と考えられた。
索引用語 退形成性膵管癌, 慢性膵炎