セッション情報 シンポジウム1

タイトル S1-009:

当院における早期胃癌に対するESDの治療成績

演者 中原 伸(佐賀県立病院好生館 内科)
共同演者 萬年 孝太郎(佐賀県立病院好生館 内科), 緒方 伸一(佐賀県立病院好生館 内科), 梶原 哲郎(佐賀県立病院好生館 放射線科), 藤本 一眞(佐賀大学 医学部 内科)
抄録 【目的】ESD の普及により大きな病変でも一括切除が可能となり,側方断端の評価困難例や遺残・再発症例は減少すると考えられる.当院では胃癌治療ガイドラインの適応症例に加え,適応拡大の症例に対しても積極的にESDを行っている.適応拡大症例の増加に伴い適応範囲や術中術後の偶発症など問題点もでてきている.当院でのESD症例について適応症例(以下適応群),適応症例を含まない適応拡大症例(以下拡大群),適応外症例(以下適応外群)の3群に分けて検討し報告する.【方法】平成13年7月より平成18年2月までに,当院で早期胃癌(腺腫を除く)に対しESDを施行した190例を対象とし,局所完全切除率,穿孔・後出血などの偶発症の有無,脈管侵襲の有無,遺残・再発の有無等について検討した.【成績】190例中,適応群は74例,拡大群は94例,適応外群は22例であった.またその他に適応外群で術中偶発症によりESDを断念した症例が2例認められた.局所完全切除率は,適応群:98.6%,拡大群:94.7%,適応外群:77.3%であったが,分割切除になった症例は全て導入後1年以内の症例であった.側方断端陽性の症例は適応外群に3例認め,追加手術を施行し,局所遺残を2例に認めた.側方断端判定不能の症例は拡大群に2例と適応外群に2例認め,適応外群の1例は追加手術を施行したが局所遺残は認めなかった.3例は本人拒否のため経過観察となった.局所再発は全症例において現時点では認めていない.脈管侵襲は,拡大群で4例(4.3%),適応外群で5例(22.7%)認められた.7例は追加手術を施行したが,2例は本人拒否のため経過観察となった.術中穿孔は,拡大群で4例(4.3%),適応外群で4例(18.2%)認められた.後出血は,適応群では3例(4.1%),拡大群では11例(11.7%),適応外群では4例(18.2%)認められた.【結論】ESDは技術習熟の難易度は高いが局所再発は認めていない.また脈管侵襲,穿孔症例は適応群には認めなかったが,拡大群・適応外群には認められ,適応外群の方が高率であった.今後,これらのリスクがあることを十分に説明した上で,十分な組織病理学的検索が可能な一括切除標本の回収が必要と考えられた.
索引用語 ESD, 早期胃癌