セッション情報 一般演題

タイトル 46:

バルーン拡張術が有効であった小腸・大腸型クローン病の一例

演者 荻野 治栄(済生会福岡総合病院 内科)
共同演者 落合 利彰(済生会福岡総合病院 内科), 茶圓 智人(済生会福岡総合病院 内科), 中村 典資(済生会福岡総合病院 内科), 吉村 大輔(済生会福岡総合病院 内科), 壁村 哲平(済生会福岡総合病院 内科)
抄録 症例は24歳女性。15歳時に小腸、大腸型のクローン病と診断。ED療法、5-ASA製剤、免疫抑制剤、整腸剤にてコントロールし、増悪時には中心静脈栄養を併用することで経過観察していた。H17年12月より少量の下血・腹満感が出現し、CRP;6.4mg/dlと炎症反応の上昇を認めたため精査加療目的にて入院となった。入院後施行した逆行性大腸造影検査にて下行結腸上部に瘻孔形成を伴う5cm長に渡る狭窄を認め、上行結腸中部から口側へバリウムは通過しなかった。また、S状結腸、横行結腸に縦走潰瘍を認めた。ゾンデ式小腸検査では回腸末端部に7cm長に渡る縦走潰瘍を認めたが狭窄は認めなかった。腹部CTにて下行結腸の瘻孔は後腹膜へ伸展ており、小膿瘍を形成していた。まず、中心静脈栄養と抗生剤にて加療し炎症反応が改善後、狭窄部に対して透視下に内視鏡的拡張術を施行した。下行結腸の狭窄部まで内視鏡を挿入し、まず9mmのバルーンにて拡張。その後12mmにて拡張したがscopeは通過しなかった。その4日後に再度バルーン拡張し、15mmまで拡張することでscopeは容易に通過した。次に上行結腸の狭窄部までscopeの先端を挿入しバルーン拡張を試みたが狭窄部の屈曲が強くガイドワイヤーの挿入が困難であったため、scope先端で掻き分けなんとか盲腸まで到達した。バルーン拡張後37度台の発熱を認めたものの抗生剤にて対処し、経口摂取開始後も特に問題なく経過した。クローン病では腸管の狭窄や瘻孔形成が問題になるが、大腸の狭窄は小腸に比べて比較的症状が出にくいため治療方針もまだ画一的なものはない。しかし、本症例は経口摂取が困難になるほどの大腸狭窄を来たしており、狭窄解除が必要であった。狭窄範囲が長く、また多発していたため手術なども検討したが再燃の可能性があることや年齢的なことからバルーン拡張術を選択した。経過は良好であり現在外来にてED療法を継続している。大腸狭窄に対してバルーン拡張が有効な症例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 クローン病, バルーン拡張術