セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

大腸-症例報告4

タイトル 消P-451:

炎症性腸疾患におけるヒト腸管スピロヘータ感染の関与についての検討

演者 岩本 淳一(東京医大茨城医療センター・消化器内科)
共同演者 齋藤 吉史(東京医大茨城医療センター・消化器内科), 緒方 衝(防衛医大・臨床検査医学), 足立 吉數(茨城大・農学部), 大原 正志(東京医大茨城医療センター・消化器内科), 松﨑 靖司(東京医大茨城医療センター・消化器内科)
抄録 [目的] 腸管スピロヘータ症は人畜共通感染症であり、近年本邦でもヒトでの腸管スピロヘータ症の報告が散見されている。潰瘍性大腸炎症例においても腸管スピロヘータ症感染の報告がなされているが、その臨床像に関しては明らかにされていない。今回我々は、潰瘍性大腸炎、クローン病症例でのスピロヘータ感染に関して検討を行った。[対象] 東京医科大学茨城医療センター(茨城県稲敷郡)にて加療中の、大腸、小腸内視鏡検査で組織採取が可能であった潰瘍性大腸炎47症例、クローン病15症例を対象として、病理学的にスピロヘータ感染の有無をretrospectiveに検討した。[結果] 潰瘍性大腸炎47症例において2例(4.3%)にスピロヘータが検出されたが、クローン病15症例においてスピロヘータは検出されなかった。スピロヘータが検出された潰瘍性大腸炎2症例についての概略は、以下のとおりである。(症例1)37歳男性。18歳発症の全大腸炎型。プレドニン2.5mgとメサラジン内服および注腸にて加療中である。スピロヘータ検出部位は横行結腸であり、びらん性病変を認めた。臨床経過としてはステロイド依存症例でプレドニン2.5mg長期投与を行っている。(症例2)60歳男性。59歳発症の直腸炎型。難治性の直腸潰瘍を繰り返している症例で直腸潰瘍部位からスピロヘータが検出された。スピロヘータへの加療はなされていないが、プレドニン3mgを継続して加療中であるが、地図状の直腸潰瘍の改善が乏しい。[結論]今回の検討では潰瘍性大腸炎症例のみスピロヘータの合併を認め、クローン病では確認できなかった。今回のスピロヘータの存在を指摘された2症例はいずれもステロイド長期投与中であるが、内視鏡所見の改善が乏しい。今後、これらの症例に対してスピロヘータの経時的な検索を行い感染に対する加療も施行して臨床経過を確認する必要性が示唆された。また今後、スピロヘータ陽性潰瘍性大腸炎の症例を蓄積して臨床像を明らかにする必要がある。
索引用語 ヒト腸管スピロヘータ感染, 潰瘍性大腸炎