抄録 |
症例 42歳女性【家族歴】姉:B型肝炎キャリア【現病歴】 H16年6月健診にてHBsAg(+)を指摘、10月AST /ALT 1143/1083となり、B型慢性肝炎急性増悪の診断にて入院。その時点で WBC : 2400/μl (Ly 66%, AtyLy 2%), Plt : 12.7万/l、AST/ : ALT 1143/ 1082 ,HBVDNA(TMA)3.3leg/ml ,肝生検ではリンパ球主体の炎症細胞浸潤を認め、門脈域の線維化は認めなかった。SNMC連日投与を行ったがAST/ALTは低下せずIFN開始,しかしAST/ALTは更に上昇したため中止。ゼフイックス1T/日を投与しAST/ALTは低下し退院。この間連日38℃台の発熱を認めた。その後もトランスアミナーゼは上昇下降を繰り返した。AST/ ALT 432/346となった時点でPSL開始、20mg/日で発熱は消失。H17年4月21日再度肝生検後PSL60mg/日に増量したところ,AST,ALT、IgGはゆっくりと低下した。その時点で肝は中等度の線維化とリンパ球の浸潤を認めた。PSL30mg/日に減量した所AST/ALTとBil再上昇,血小板低下も認めエンドキサンP(50mg/日)を加えた。しかしT.Bilはさらに上昇しH17.9.1再入院。【現症】B.T. 38.6℃, LNs : not palpable(CBC)WBC : 1700/μl (Myelo 1%, Meta 2%, Ly 37%, AtyLy 2%), Plt : 8.6万/l(生化学)Alb : 3.0g/dl, T-Bil : 7.26mg/dl, D-Bil : 5.76mg/dl, AST : 118IU/l, ALT : 146IU/l(免疫学)EBVVCAIgG(-), EBVVCAIgG 1280倍, EBVVCAIgA 20倍, EBVEA-DR IgG 80倍, EBVEA-DR IgA 20倍, EBVEBNA, EBVDNA定量 3.3×105copi/106WBC,EBVDNAサザンブロット モノクローナルな増殖 骨髄検査 NCC 15.3万/μl, MgK 150/μl, 血球貪食像散見, EBNA2(-), LMP-1(+) CT:肝脾腫(肝生検)線維化非常に強い。肝細胞の脱落、炎症細胞浸潤あり。入院経過:9月2日よりm-PSLパルス療法を行ったが効果なし。慢性EB感染症からリンパ腫を来していると診断。9月13日より化学療法を施行したが効果なく、骨髄移植の予定であったが急性増悪の為20日後永眠された。考察;慢性EB感染症は比較的稀な予後不良な疾患であり、多くは肝不全や免疫不全で死に至る。骨髄移植が有効であるとする報告もあるが確立された治療はない。本症例はB型肝炎キャリアに生じたため診断が極めて困難であった。各種治療に抵抗性の肝障害では、慢性EB感染症も念頭に置くべきと考える。 |