セッション情報 ワークショップ1

タイトル W-015:

シェーグレン症候群に合併した肝機能障害の2例

演者 中川 兼康(国家公務員)
共同演者 坂本 典子(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 肝臓科), 具嶋 敏文(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 肝臓科), 高崎 智子(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 健康科学センター), 相島 慎一(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 病理), 高橋 和弘(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 肝臓科)
抄録 【症例1】 31歳 男性.機会飲酒。常用薬剤なし.27歳時より体幹、四肢に皮疹の出現、消退を繰り返していた.2002年10月肝機能障害のため入院した.身長 175.8 cm, 体重 104 kg, BMI 33.7, 前胸部・左前腕・左大腿に発赤、掻痒を伴う皮疹を認めた.T.bil 0.42 mg/dl, D-bil 0.18 mg/dl, AST 68 IU/l, ALT 198 IU/l, ALP 231 IU/l, γ-GTP 82 IU/lと肝機能異常を認めた. HBsAg, HCVAbは陰性, IgG 1890 mg/dlと上昇し ,抗核抗体 1280倍, 抗ミトコンドリア抗体 陰性,抗平滑筋抗体 陰性,抗SS-A抗体 420.8 U/ml, 抗SS-B抗体 340.4 U/mlであった.皮膚生検所見および自己抗体よりシェーグレン症候群と診断した.肝生検組織は,非アルコール性脂肪肝炎の所見であった.食事および運動療法で減量したところ,肝機能の改善を認めた.治療の前後でIgGの値は不変であった.
【症例2】 38歳 女性。飲酒歴なし.1999年より特発性血小板減少性紫斑病,2000年よりシェーグレン症候群で通院中.2005年3月肝機能障害で入院した.T.bil 0.64 mg/dl, D-bil 0.22 mg/dl, AST 42 IU/l, ALT 56 IU/l, ALP 354 IU/l, γ-GTP 127 IU/lと肝機能異常を認めた.HBsAg, HCVAbは陰性,IgG 1840 mg/dlと上昇し,抗核抗体 160倍, 抗ミトコンドリア抗体陰性, 抗平滑筋抗体160倍, 抗SS-A抗体 500.0 U/ml以上, 抗SS-B抗体 16.1 U/ml,であった.肝生検所見より自己免疫性肝炎と診断した.ステロイドの投与で肝機能の改善を認め,IgGも低下した.
【考察】 シェーグレン症候群には時に肝機能異常が合併することが報告されている.多くの場合,症例2の自己免疫性肝炎のように自己免疫性肝疾患であることが多く,何らかの免疫学的機序を介し合併した可能性が示唆されている.しかし,まれではあるが症例1の非アルコール性脂肪肝炎のように偶然他の肝疾患を合併する場合もある.シェーグレン症候群では,高γグロブリン血症,抗核抗体陽性等,自己免疫性肝炎同様の血清学的所見を呈するため,肝機能障害の評価は組織を含めた詳細な評価が必要と考えられる.
索引用語 シェーグレン症候群, 肝機能障害