セッション情報 シンポジウム2

タイトル S2-001:

自己免疫性膵炎の診断と予後についての検討

演者 山尾 拓史(長崎市立市民病院 内科)
共同演者 山川 正規(長崎市立市民病院 内科), 堤 卓也(長崎市立市民病院 内科), 小原 則博(長崎市立市民病院 外科), 入江 準二(長崎市立市民病院 病理), 水田 陽平(長崎大学附属病院 第二内科), 河野 茂(長崎大学附属病院 第二内科)
抄録 自己免疫性膵炎(以下AIP)は2002年の診断基準の作成とともに一般に認知されるようになった。しかし診断基準を満たさないAIPの報告もみられることより限局性や胆管狭窄を伴う症例に関しては悪性腫瘍との正確な鑑別が必要である。自験例AIP5例についての診断および予後について検討した。【対象】2001年4月から2006年3月までに当院で経験したAIPの5例。男女比3:2。平均年齢64.8歳。【結果】1〕主訴は体重減少3例、閉塞性黄疸2例、腹痛2例、2〕膵炎の範囲は限局性1例、びまん性4例。画像所見ではCTでびまん性膵腫大4例、そのうち膵辺縁の被膜様低吸収域を伴うもの3例、限局性膵腫大1例であった。ERPで膵管狭細化は膵管長の1/3未満1例、2/3以上4例であった。胆管狭窄例は3例で、全例膵内胆管狭窄例であり膵外胆管狭窄は認めなかった。限局性の1例はCT、ERCPで膵管癌が疑われたがEUSにて内部はびまん性点状高エコー像を呈し腫瘤像は認めずAIPと診断した。4例で膵生検〔腹腔鏡3例、開腹1例〕を行いずれも膵小葉間に線維化とリンパ球を主体とした炎症細胞浸潤を認めた。3〕IgGは1例、IgG4は計測例の全例(4例)で上昇、CA19-9は2例、DUPAN2は2例(うち1例は11148U/mlと著名高値)、SPAN-1抗原は2例で著名に上昇していた。4〕合併症はII型糖尿病4例、後腹膜線維症1例、シェーグレン症候群1例。5〕治療は全例PSL投与(40mg3例、30mg2例)を行った。全例で現在も少量(5~10mg)維持療法中である。経過観察期間は338日から1676日、平均882日間。寛解維持例は4例で1例はPSL減量中7.5mgで縮小していた後腹膜線維症が再度増大を認めた。糖尿病の4例はすべて加療後に軽快した。【結論】症状は罹患部位により異なり、Typeではびまん性が多くみられた。造影CTで多くが被膜様の低吸収域を有し診断に有用であったが限局性では膵管癌との鑑別が困難で、診断にはEUSが有用であった。限局性や胆管狭窄例、膵胆道系腫瘍マーカー上昇例も多く、診断に際し膵癌、胆管癌との正確な鑑別が必要であると思われた。AIPと周辺疾患の再発予防にはPSL少量維持療法が必要と思われるが期間や用量については今後の検討を要すると思われた。
索引用語 AIP(診断), AIP(予後)