セッション情報 一般演題

タイトル 154:

腹腔内遊離ガス、門脈ガス血症を伴う腸管気腫性嚢胞症を保存的に加療した1例

演者 翁長 正明(都城市郡医師会病院 消化器内科)
共同演者 木村 友昭(都城市郡医師会病院 消化器内科), 仲道 展久(都城市郡医師会病院 消化器内科), 島 雅保(都城市郡医師会病院 外科), 太田 嘉一(都城市郡医師会病院 外科), 瀬口 浩司(都城市郡医師会病院 外科), 東 秀史(都城市郡医師会病院 外科)
抄録 【はじめに】腸管気腫性嚢胞症(PCI)は腸管壁内に含気性嚢胞を生じる比較的稀な疾患で、時に腹腔内遊離ガス像を認め、消化管穿孔との鑑別が必要となる場合がある。今回腹腔内遊離ガス像、門脈ガス血症を伴うPCIを保存的に加療したので報告する。【症例】患者は57歳、男性。2005年4月当院脳外科に右延髄梗塞のため入院。保存的に加療され近医に転院した。7月11日腹痛が出現し、鎮痛薬も無効であったため精査加療目的に7月13日当院に転院。胸写でフリーエアを認め、腹単では拡張した結腸と腸管壁に透亮像を認めた。腹部CTにて腹腔内遊離ガス像、門脈ガス血症を伴う腸管気腫性嚢胞症と診断、入院した。CTでは回盲部から下行結腸まで全周性の腸管壁内気腫を認めた。腸管壁に造影効果を認めたが、門脈ガスと腹腔内遊離ガスも認めたため腸管壊死や消化管穿孔の可能性が否定できなかった。触診上、腹部は軟で下腹部に圧痛を認めたが、腹膜刺激所見なく、血液検査ではWBC 6800, LDH 313, CPK 132, CRP 0.2と腸管壊死や消化管穿孔を示唆する所見に乏しかった。そのためIVH管理とし保存的に加療を開始した。入院翌日には腹痛は軽減し、入院3病日のCTでは門脈ガスは消失し、腸壁内気腫および腹腔内遊離ガスは減少していた。血液検査でも炎症所見を認めず、7病日のCTでは腸壁内気腫、遊離ガスは消失していた。8病日CFを予定しニフレック1包及びグリセリン浣腸 120mlを投与したが、ほとんど排便はみられなかった。水洗しながら大腸内視鏡を挿入したが、ブチルスコポラミン20mg投与後も腸管の蠕動は持続した。肉眼的に気腫性変化や粘膜異常を認めなかった。【考案】本症例は糖尿病が基礎疾患にあり、αグルコシダーゼ阻害薬による便秘により腸管内圧が上昇しPCIを発症した可能性が考えられた。また延髄梗塞によると思われる機能的便秘症も便秘を悪化させた可能性が考えられた。αグルコシダーゼ阻害薬服用中に腹痛が出現するときは胸部、腹部X線検査や時にCT検査も行う必要があると考えられた。
索引用語 腸管気腫性嚢胞症, 保存的治療