抄録 |
【背景】近年の美容や健康への関心は高まり,美容や健康増進目的でサプリメントや健康食品といった民間薬を生活習慣の一部として取り入れている人々は多数に及ぶ.インターネットの普及で個人輸入も簡単に行えるようになり,海外で健康被害の報告がありながら個人的に入手して服用する危険性が潜んでいることも事実である.また慢性疾患の改善を期待して,本来は疾患への治療効果はないとされる健康食品を服用した結果,肝障害などの健康被害に見舞われる例もある.【目的】民間薬による肝障害の現状を把握し日常診療へ反映する.【対象と方法】健康食品の摂取状況の例として2002年6月1日~1カ月間(7月の中国製やせ薬の報道以前)に当科とその関連病院で施行した消化器病患者を対象としたアンケート調査結果を検討する.民間薬による薬物性肝障害の変遷の実例として(1)1989年~1998年に発症した薬物性肝障害の集計結果,(2)我々がその集計結果を報告した日本肝臓学会主催の2002年1年間に発症した健康食品・やせ薬による薬物性肝障害全国調査,(3)第8回日本肝臓学会大会に関連して行われた2001年初頭~2003年末の3年間(調査2の期間拡大)の調査結果を検討する.【結果】アンケート調査:回答者421名.服用経験者72.3%(326名).服用品目数1人平均3品目.1位;ビタミン類(42%),2位;ウコン(35%),3位;アガリクス(16%)であった.調査(1)計2561例中,原因と思われた薬物(以下,起因薬)が「いわゆる健康食品」など一般の治療薬以外のものは15例.調査(2)1次調査で報告された薬物性肝障害1016例中,やせ薬・健康食品によるものは262例(25.8%)でやせ薬55例,その他の健康食品は207例でウコンが11例と最多であった.調査(3)いわゆる健康食品による肝障害は165例.原因の健康食品がある程度明らかであったのは131件.うち36件は中国製やせ薬などの無承認無許可医薬品.それ以外では前年の調査結果(2)と同様に起因薬はウコンが36例と最多であった.【考察】民間薬による肝障害で死亡例の報告もあることを踏まえて,肝障害を見た場合に詳細な問診を行い民間薬の服用も把握することが重要である.医師が患者へ説明できるような民間薬の効果や副作用についてのエビデンスが求められる. |