セッション情報 シンポジウム2

タイトル S2-008:

自己免疫性膵炎の長期予後と再燃例の検討

演者 河邉 顕(九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科)
共同演者 有田 好之(九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科), 宜保 淳也(九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科), 加来 豊馬(九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科), 安田 幹彦(九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科), 大野 隆真(九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科), 伊藤 鉄英(九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科)
抄録 【背景】自己免疫性膵炎(AIP)は疾患概念が広く認知されてきたが、その長期予後、ステロイド治療後の再燃例など未解決の問題も多い。【目的】当科外来にて長期経過観察可能であったAIP16症例について、膵形態変化、膵内外分泌機能、糖尿病治療、および再燃例について検討した。【結果】AIP16症例の臨床的背景は年齢32-80歳(平均62歳)で、男性13例、女性3例であった。AIP発症時の病態は膵びまん性腫大13例、限局性腫大が3例であった。胆管病変は11例に認められ、膵・胆管外病変が5例に認められた(耳下腺・顎下腺・涙腺腫大、嗅覚異常、肝炎症性偽腫瘍、ITP)。初期治療としてステロイドを投与した症例は15例(10-60mg)であり1例は無治療にて軽快した。その後当科外来にて全例経過観察を行った。経過観察期間は1-11年で平均4.8年であり、13例はステロイド維持投与中(2.5-10mg)である。膵形態変化を腹部CT検査を用いて行った。結果、膵の萎縮が16例中14例(88%)と高率に認められ、膵石灰化が4例(25%)に新たに出現した。13例に膵外分泌機能低下を認め、そのうち12例に膵酵素補充療法を必要としている。さらに16例中12例は耐糖能異常を認め、その内訳は膵性糖尿病7例(58%)、2型糖尿病3例(25%)、IGT 2例(17%)であった。糖尿病治療は7例にインスリン治療を、1例は経口血糖降下剤を用いている。一方、ステロイド治療中および中止後にAIPが再燃した症例は16例中6例に認められた。そのうちは4例は膵腫大で再燃したが、2例は膵外病変として再燃した(後腹膜線維症、肝胆道系酵素上昇)。【考察】AIPは長期経過の結果、膵形態および内外分泌機能において、慢性膵炎、慢性石灰化膵炎と同様の病態を示すことが示唆され、患者のQOL維持のためには多くの症例で膵酵素補充やインスリン治療を必要とすると考えられた。さらに、ステロイド治療中および中止後には再燃症例を認めることがあるため、注意深い経過観察を必要とすることが考えられた。
索引用語 自己免疫性膵炎, 慢性膵炎