セッション情報 一般演題

タイトル 96:

自然消退傾向を呈した肝細胞癌の一例

演者 有尾 啓介(佐賀大学 医学部 内科)
共同演者 水田 敏彦(佐賀大学 医学部 内科), 熊谷 貴文(佐賀大学 医学部 内科), 江口 有一郎(佐賀大学 医学部 内科), 安武 努(佐賀大学 医学部 内科), 尾崎 岩太(佐賀大学 医学部 内科), 藤本 一眞(佐賀大学 医学部 内科)
抄録 【症例】74歳女性。2004年6月に大腸癌と肝細胞癌を同時に指摘され、同年8月に回盲部切除、肝S6区域切除、S4開腹下RFA施行された。2005年10月に肝S7にHCC再発を認め、精査加療目的に2005年11月28日当院入院となった。アルコール歴はビール350ml/日×50年、既往歴に34歳時に子宮癌手術、44歳時に乳癌手術、50歳時より糖尿病あり。入院時血液検査:WBC 5800/μl、RBC 397万/μl、Hb 12.5 g/dl、Ht38.2%、Plt 5.3万/μl、PT 96.3%、Alb 4.1g/dl、T-Bil 1.2mg/dl、AST 109 IU/l、ALT 106 IU/l、ICG(15) 13.2%、AFP 7784ng/ml、L3分画86.5%、PIVKA-II 714mAU/ml、HCV-Ab(+)。腹部USではS7に3×5cmのモザイク状結節を認め、血管造影下CTでは同結節はCTHAで濃染、CTAPで低吸収であり、門脈後区域枝の欠損がみられた。また左葉外側区にも同様の結節を認め、肝内転移巣と考えられた。【臨床経過】門脈浸潤を伴うstage IV Aの再発肝細胞癌と診断し、全身状態と肝予備能は良好であったため外科的切除の方針で術前検査を進めた。しかし2005年12月の腹部USでS7結節が縮小傾向を示し、2006年1月CTでは門脈内病変は消失し再潅流が確認され、肝内転移巣も縮小していた。腫瘍マーカーも2006年2月にはAFP 6.0ng/ml、 L3検出感度以下、PIVKA-II 12mAU/mlと著減が認められた。縮小したS7結節部位から針生検を施行したところ、悪性所見はなく、変性・壊死した組織が認められた。【考案】本症例は進行肝細胞癌の自然退縮例と考えられた。これまでに肝細胞癌の自然退縮の報告は散見され、消化管出血や腫瘍の急速増大、血行障害、感染症合併や禁酒など契機となることが想定されているが、本症例にはいずれも当てはまらず貴重な症例と考えられたので、若干の考察を加え報告する。
索引用語 肝細胞癌, 自然消退