抄録 |
【目的】すでに早期胃癌に対するESDは安全かつ確実な治療法として確立した地位を得ている。しかし、適応拡大病変、完全適応外病変に対する治療成績、長期予後については多数の報告は見られていない。【方法】当院では早期胃癌に対するESDの術前適応を、原則として分化型腺癌で、明らかなSM浸潤の所見なく、腫瘍径はUL(+)は3cm以下とし、病理診断において、組織型、切除断端及び、深達度などにより、根治度を判定している。当院では2002年2月から2006年2月において、早期胃癌241例に対しESDを行い、その内訳は(A)適応内病変146例、(B)適応拡大病変67例、(C)完全適応外病変28例であった。【成績】全241病変中一括切除率は93.4%(225/241)で、一括断端陰性率は86.3%(208/241)であった。その内訳別ではそれぞれ一括切除率はA;97.3%(142/146),B;92.5%(62/67),C;75.0%(21/28)、一括断端陰性率はA;95.2%(139/146),B;85.1%(57/67),C;42.9%(12/28)であった。また(B)適応拡大病変67例の内訳は、(1)Ul(-)の分化型粘膜内癌腫瘍径2cm以上;36例、(2)Ul(+)の分化型粘膜内癌で腫瘍径3cm以下;17例、(3)分化型sm1癌で腫瘍径3cm以下かつ脈管侵襲(-);12例、(4)Ul(-)の未分化型粘膜内癌で腫瘍径2cm以下;2例で、それぞれの一括切除率は(1)97.2%(35/36),(2)82.4%(14/17),(3)91.7%(11/12),(4)100%(2/2)、一括断端陰性率は(1)88.9%(32/36),(2)70.6%(12/17),(3)91.7%(11/12),(4)100%(2/2)であった。【結論】ESD施行開始初期の手技が確立されていない頃の症例を含めても、適応内病変、適応拡大病変は治療成績良好であり、その治療成績からは十分適応拡大可能と考えられるが、(B)適応拡大病変のうち、(2)Ul(+)病変はその中ではやや成績不良であり、今後の治療手技の課題と考えられた。 |