セッション情報 一般演題

タイトル 127:

難治性回腸炎を合併した潰瘍性大腸炎の1例

演者 梁井 俊一(九州大学大学院 病態機能内科学)
共同演者 城 由起彦(九州大学大学院 病態機能内科学), 江崎 幹宏(九州大学大学院 病態機能内科学), 中村 昌太郎(九州大学大学院 病態機能内科学), 松本 主之(九州大学大学院 病態機能内科学), 王寺 裕(九州大学大学院 形態機能病理学), 八尾 隆史(九州大学大学院 形態機能病理学), 植木 隆(九州大学大学院 臨床腫瘍外科学), 檜沢 一輿(九州中央病院 内科), 飯田 三雄(九州大学大学院 病態機能内科学)
抄録 症例は17歳男性.平成17年4月に下血が出現、九州中央病院内科を受診し、全結腸炎型の潰瘍性大腸炎と診断された.経口プレドニンの投与で一旦緩解したが、減量中に再燃を認めた.プレドニンの増量に加え、顆粒球除去療法を行ったが改善に乏しく、同年12月より再入院となった.中等症の再燃と判断され、完全中心静脈療法下でプレドニン80mgの強力静注療法を開始されたが、治療開始後も発熱と下血、腹痛が改善せず12月19日に当院へ転院となった.当科入院時、38度台の発熱、下血、腹痛の持続、高度の炎症所見を認めた.S状結腸内視鏡上は遠位大腸は中等症の所見であったが、CT上盲腸から深部大腸および下部回腸の壁肥厚を認めた.プレドニン治療を継続したが臨床症状および炎症所見の改善が依然不良であった.重症型でステロイド抵抗性と判断し、シクロスポリン持続静注療法を開始したところ、炎症反応はほぼ正常化し腹痛も軽減したが、間歇的な下血は持続した.転院後14日目に血圧低下を伴う大量の下血を認め、当院第一外科にて結腸切除および回腸人工肛門造設術を施行した.手術所見では回腸末端より口側約120cmにわたり回腸の漿膜面に血管の増生が目立ち、腸管の浮腫を認めた.切除大腸の肉眼所見は、深部大腸を中心に多発する潰瘍瘢痕を認めたが出血部位は同定出来なかった.術後も回腸よりの間歇的な出血が持続し、人工肛門よりの内視鏡では回腸に塑像な粘膜と打ち抜き様の潰瘍を認め、同部位からの出血と考えられた.また、回腸よりの生検組織などからはCMV感染、その他の炎症性腸疾患、感染性腸炎の所見は認めず、潰瘍性大腸炎に伴った回腸病変と考えられた.引き続き、中心静脈栄養の継続、ステロイドの注腸、更に、インフリキシマブ投与を行ったところ、回腸の浮腫性変化は徐々に改善した.内視鏡上も回腸粘膜は炎症性ポリープ多発と類円形の欠損治癒が散見され治癒傾向を認めた.本症例は通常みられるbackwash ileitisと異なり、病変範囲が口側に広範に広がり術後も潰瘍治癒が遷延し稀な症例と考えられた.
索引用語 回腸炎, backwash ileitis