セッション情報 一般演題

タイトル 50:

原発性多発性小腸癌の一例

演者 白石 良介(武雄市民病院内科)
共同演者 吉川 敦(武雄市民病院内科), 森戸 清人(武雄市民病院外科), 村上 総一郎(武雄市民病院外科), 隅 健次(武雄市民病院外科), 鮫島 隆一郎(武雄市民病院外科), 樋高 克彦(武雄市民病院外科)
抄録 【はじめに】小腸癌は全消化管悪性腫瘍の0.3~1.0%を占めるに過ぎず,早期発見が困難な症例が多く,進行した状態で発見されることも少なくない.今回,われわれは原発性多発性小腸癌(未分化腺癌)を経験したので報告する.【症例】48歳,男性.2005年4月頃より心窩部痛と食欲不振が出現.近医で上部消化管内視鏡検査を行い有意所見を認めなかったが次第に体重減少がみられた.2005年12月当院初診.8ヶ月で体重が15kg減少しており入院となった.心窩部に圧痛を認め,発熱はなかったが血液検査上,軽度の貧血と炎症所見を認めた.腹部CTでは軽度の小腸壁肥厚を認めるのみで,上部および下部消化管内視鏡検査を施行したが有意な所見は認めなかった.腫瘍マーカーはCEA,CA19-9ともに陰性であった.心窩部痛が食事摂取で増悪するため,2006年1月小腸造影を施行した.左側腹部に腫瘍性の狭窄病変を2ヶ所認め,良悪性鑑別のためFDG-PETを施行したところ空腸に2ヶ所のHot spotを認めた.したがって,小腸腫瘍による狭窄が原因と考え,診断的治療として開腹手術を行った.腫瘍は空腸に弾性硬の腫瘤として漿膜下に2つ存在し,腫瘤を一括切除した.腸間膜リンパ節は複数腫脹を認めた.切除標本は未分化腺癌で摘出リンパ節に明らかな転移は認めなかった.術後経過は良好で,現在,TS-1単剤での化学療法を行っている.【考察】原発性小腸癌は小腸腫瘍の32.6%を占め,組織型は腺癌が多く,このほとんどが高~中分化腺癌である.本例のような低~未分化腺癌は9.3~15.8%である.予後に関しては,5年生存率は低分化腺癌で22.4%と高分化腺癌の39.4%に比べ予後不良である.小腸腫瘍に対する化学療法は,症例数が少ないため,系統的に行われた成績がなく確立されていない.【結語】多発性小腸腫瘍の1例を経験した.小腸癌そのものの頻度が少なく,効果的な抗癌剤の投与法が確立されていないため,今後,病変の早期発見と症例の集積が重要である.
索引用語 小腸癌, 化学療法