セッション情報 一般演題

タイトル 183:

肝生検時の止血用ゼラチンスポンジにてアナフィラキシーを来たした1例

演者 熊谷 貴文(佐賀大学 医学部 内科学)
共同演者 江口 有一郎(佐賀大学 医学部 内科学), 有尾 啓介(佐賀大学 医学部 内科学), 安武 努(佐賀大学 医学部 内科学), 尾崎 岩太(佐賀大学 保健管理センター), 水田 敏彦(佐賀大学 医学部 内科学), 藤本 一眞(佐賀大学 医学部 内科学)
抄録 【はじめに】肝疾患の病態把握のためには、肝生検による組織学的検査が重要である。その際最も懸念される合併症は出血であり、その防止のため止血用ゼラチンスポンジが使用されることがある。今回,肝生検時に使用したゼラチンスポンジによりアナフィラキシー症状を呈した症例を経験したので報告する。【症例】49歳女性。 2002年頃から検診にて肝障害を指摘され当院受診。著明なobesityがありNASHを疑われ、肝生検目的にて入院となる。151.5 cm, 74.4 kg,BMI 32.4。血小板 27.9万 /μl,TP 7.3 g/dl,Alb 4.1 g/dl,T-Bil 1.0 mg/dl,FPG 156 mg/dl,AST 118 IU/l,ALT 137 IU/l,LDH 503 IU/l,ALP 273 IU/l,γGTP 51 IU/l,ChE 350 IU/l,HbA1c 5.9 %,T-Chol 239 mg/dl,TG 131 mg/dl, HBs-Ag (-),HCV-Ab 3.64 S/CO。肝生検にて組織採取終了後、止血用ゼラチンスポンジの小片を外筒針より挿入したところ、頻呼吸、呼吸困難が出現。血圧低下はなかったが,聴診上stridorを認めたため、アナフィラキシーと判断。Epinephrine 0.1 mg皮下注、hydrocortisone 100 mg点滴静注にて呼吸困難は改善した。後日、肉アレルギーの既往があることが判明したため、ゼラチンスポンジによるアナフィラキシーと診断した。【考察】ゼラチンスポンジは動物の骨・皮膚・靱帯・腱を原材料としたものであり、加熱処理してあるものの抗原性は有している可能性が高い。ゼラチンスポンジは、肝疾患領域においては肝細胞癌に対する肝動脈塞栓療法時の塞栓物質としても汎用されるなど使用する頻度が高いため、本例のような重篤な病態を引き起こす可能性があることを念頭に置き、充分な病歴聴取をするなどの注意をはらう必要があると考えられた。
索引用語 肝生検, ゼラチンスポンジ