セッション情報 一般演題

タイトル 133:

脾臓のinflammatory pseudotumorの一例

演者 服部 麻衣子(公立学校共済組合九州中央病院 臨床研修医)
共同演者 中村 俊彦(公立学校共済組合九州中央病院 外科), 梶谷 桂子(公立学校共済組合九州中央病院 外科), 中守 真理(公立学校共済組合九州中央病院 病理), 庄司 哲也(医療法人 貝塚病院), 長谷川 博文(公立学校共済組合九州中央病院 外科), 住吉 康平(公立学校共済組合九州中央病院 外科), 斎藤 元吉(公立学校共済組合九州中央病院 外科), 定永 倫明(九州大学付属病院 第二外科), 北村 薫(公立学校共済組合九州中央病院 外科), 北村 昌之(公立学校共済組合九州中央病院 外科)
抄録 【はじめに】脾臓のinflammatory pseudotumor (IPT)は比較的稀で、他の脾臓腫瘍との鑑別が困難とされる疾患である。今回我々は、術前診断に難渋した脾臓のIPTの手術例を経験したので報告する。【症例】49歳男性。主訴:なし。現病歴:平成17年11月、尿潜血を指摘された際泌尿器科へ行き、腹部エコーにて脾臓に10cm大の腫瘤を認め、精査目的に外科へ転科となった。既往歴・理学所見・血液検査所見:特記事項なし。画像所見:腫瘤は脾門部より頭側に位置し、造影CTで造影効果を認めず、MRIT1強調像で等信号、MRIT2強調像で低信号、血管造影でhypovascularな腫瘤、Gaシンチで集積を認めなかった。術前に確定診断が得られなかったが、血管肉腫やリンパ管肉腫などの悪性腫瘍の可能性が考えられたため、平成18年1月26日、脾臓摘出術を施行した。摘出標本:割面で8.8×7.8cm大、正常脾臓組織に類似し、内部に黄白色の構造物が索状に存在していた。辺縁は平滑で境界明瞭であった。病理組織学的検査所見:炎症細胞浸潤を伴う線維性肉芽腫で、IPTと診断された。【考察】IPTは組織学的に悪性所見を認めず、非特異的炎症および間葉系組織の修復像を主体とした良性疾患であるが、形態上では悪性腫瘍との鑑別は非常に困難である。また、報告症例のほとんどが無症状であり、発見の契機は、検診や他疾患の精査での画像検査の際、偶然発見されることが多かった。本邦報告例においても、術前にIPTと確定された症例はなく、悪性腫瘍が否定できず、最終的に手術にて診断されていた。IPTとの鑑別が困難な脾臓腫瘍には、平滑筋腫、リンパ管腫、脾梗塞、血管腫、悪性リンパ腫、転移性腫瘍などが挙げられる。IPTの検査所見に特異的所見はなく、術前の確定診断は非常に困難であるため、悪性腫瘍との鑑別のためにも、外科的切除を考慮する必要がある。
索引用語 脾臓, 良性腫瘍