セッション情報 一般演題

タイトル 75:

Groove pancreatitis の1例

演者 下田 良(佐賀大学 医学部 消化器内科)
共同演者 山口 加奈子(佐賀大学 医学部 消化器内科), 杉本 望(佐賀大学 医学部 消化器内科), 坂田 資尚(佐賀大学 医学部 消化器内科), 藤瀬 剛弘(佐賀大学 医学部 消化器内科), 大谷 響(佐賀大学 医学部 消化器内科), 綱田 誠司(佐賀大学 医学部 光学医療診療部), 坂田 祐之(佐賀大学 医学部 消化器内科), 岩切 龍一(佐賀大学 医学部 光学医療診療部), 藤本 一眞(佐賀大学 医学部 消化器内科)
抄録 症例は56歳男性。腹部CTにて膵頭部腫瘤を指摘され、精査目的にて当院紹介・入院となった。明らかな自覚症状は認めなかったが、アルコールの長期飲酒歴あり、20年前よりくり返す慢性膵炎急性増悪の既往あり。入院時血液検査結果ではアミラーゼほか膵酵素の上昇は認めず、CA19-9等の腫瘍マーカーの上昇も認められなかった。腹部造影CTでは主膵管の拡張・肝内胆管の軽度拡張以外に、Groove領域(十二指腸下行脚と膵頭部・総胆管に囲まれた領域)から膵頭部にかけて石灰化を伴う境界不明瞭な腫瘤性病変を認めた。dynamic studyでは早期相から晩期相にかけて漸減性の造影効果を認めた。腹部MRIにおいて腫瘤はT1強調像で低信号を呈し、T2強調像で淡い高信号を呈し、CT・MRIともにGroove pancreatitis として矛盾しない所見であった。膵癌との鑑別が必要と考えられERCPを施行したが、主膵管の拡張像は認めるものの、不整像は認めず。膵液細胞診の結果もGroupIであり、積極的に膵癌およびその合併を示唆する所見は認められなかった。今回、腹痛・嘔気・体重減少などの臨床症状もみられなかったことより、厳重な経過観察を行う方針として精査終了・退院となった。Groove pancreatitis は、十二指腸下行脚と膵頭部・総胆管に囲まれたいわゆるGroove領域を中心とした限局性の慢性膵炎であり、臨床上膵癌との鑑別が重要である。Groove領域に限局し、膵実質に異常を認めないpure formと、連続した膵頭部背側にも炎症の波及がみられるsegmental formに分類され、本症例は後者に相当すると考えられる。pure formの報告は本邦では数例と稀であり、segmental formも30例程度と、その報告は比較的少ない。よって今回若干の文献的考察も含め報告をする。
索引用語 Groove pancreatitis, 慢性膵炎