セッション情報 一般演題

タイトル 67:

出血性ショックを来した総胆管十二指腸乳頭瘻出血の1例

演者 蓑田 竜平(福岡大学 筑紫病院 消化器科)
共同演者 植木 敏晴(福岡大学 筑紫病院 消化器科), 大谷 圭介(福岡大学 筑紫病院 消化器科), 清水 愛子(福岡大学 筑紫病院 消化器科), 藤村 成仁(福岡大学 筑紫病院 消化器科), 久部 高司(福岡大学 筑紫病院 消化器科), 松井 敏幸(福岡大学 筑紫病院 消化器科), 境 隆暢(福岡大学 筑紫病院 放射線科)
抄録 症例は70歳台の女性.2型糖尿病、陳旧性心筋梗塞に対し、当院通院中であった.抗血小板剤を内服していた.2006年3月吐血のため救急車で搬入されが、腹痛や黄疸、発熱はなく、意識は清明であったが、血圧は78/40 mmHgとショック状態であった.血液検査では著明な貧血、白血球の上昇、血糖値の上昇、BUN・クレアチニンの上昇を認めたが、膵酵素や肝胆道系酵素の上昇はなかった.緊急で上部消化管内視鏡検査を施行したところ、Papilla Vaterより拍動性の出血を認めた.単純CTでは膵、胆道系に明らかな異常は指摘できなかった.Hemocuccus pancreaticusを疑い、血管造影を施行するも動脈瘤や出血を思わせる所見はなく、出血の原因は不明であった.Hbが14 g/dl→7.2 g/dlと貧血を認めたため、MAP 2単位輸血した.第2病日貧血は進行し、さらにMAP 2単位輸血した.原因検索のため第3病日にERCPを施行した.胃・十二指腸内には多量の血液を認めた.膵管造影では明らかな異常はなかったが、胆管造影にて下部胆管に嵌頓している結石を認めた.さらに造影剤を注入すると、造影剤は総胆管を経由して十二指腸に排泄され、結石の嵌頓を解除すると出血は止まった.ERBD tubeを留置し、1週間後ESTを施行し、截石した.本症例は総胆管結石の嵌頓により総胆管十二指腸瘻を形成し、同部から出血を来していた.入院時、腹痛や肝胆道系酵素の上昇はなく、仮性膵嚢胞や膵癌、乳頭部癌からの出血が疑われた.血液検査で肝胆道系酵素が上昇していなかったのは、瘻孔から胆汁が十二指腸へドレナージされていたためであった.腹痛などの自覚症状が乏しかったのは長年にわたる糖尿病のためと思われた.総胆管十二指腸瘻で出血性ショックを起こすことは稀であり、文献的考察を加え報告する.
索引用語 総胆管結石, 総胆管十二指腸乳頭瘻