抄録 |
症例は80代女性。気管支拡張症、C型慢性肝炎、心房細動、骨粗鬆症等にて近医通院中。平成16年8月より上気道炎症状あり同医にて抗生剤使用されていたが、38℃前後の発熱持続し、CRP 6~9mg/dlと血液検査上の炎症所見も持続したため不明熱の精査目的で9月25日紹介入院した。当初不明熱の鑑別として行った胸部Xp、胸部CT、腹部エコー、腹部CT、頭部MRIにて原因と考えられる病変なく、各種培養も陰性で、10月1日の胃カメラでは、胃体部の軽度のびらん像を認めるのみであった。入院後も37~38℃の発熱は持続し、不明熱の原因精査に難渋したが、血尿、腎障害の出現、MPO-ANCA陽性にて顕微鏡的多発血管炎を疑い、10月29日よりプレドニン40mg/日(1mg/kg)開始した。発熱、CRPは一旦軽快傾向にあったが、貧血進行していたため、11月2日に胃カメラを施行したところ胃体中部大弯に限局性の著明なひだの肥厚を認め、粘膜は浮腫状で、発赤、充血像を呈していた。同部位の生検病理組織は、小血管のフィブリノイド壊死と血管周囲の好中球浸潤を認め顕微鏡的多発血管炎に伴う胃病変と考えられた。血管炎の活動性はコントロール困難で肺胞出血、腎不全、多臓器不全となり人工呼吸管理、ステロイドパルス療法等を行うも効なく11月22日死亡退院となった。消化管の生検病理組織診断にて、血管炎像を認めることは稀であり、若干の文献的考察を加え報告する。 |