セッション情報 シンポジウム3

タイトル S3-010:

C型慢性肝炎におけるインスリン抵抗性・肝脂肪化の耐糖能障害や肝線維化に与える影響について

演者 成田 竜一(産業医科大学 医学部 消化器・代謝内科)
共同演者 田原 章成(産業医科大学 医学部 消化器・代謝内科), 阿部 慎太郎(産業医科大学 医学部 消化器・代謝内科), 大槻 眞(産業医科大学 医学部 消化器・代謝内科)
抄録 【背景】C型慢性肝炎は他の原因による慢性肝炎と比較し糖尿病が頻繁に観察されることが知られている。また、組織像として肝脂肪化が特徴として上げられる。糖尿病発症や肝脂肪化にはインスリン抵抗性の増大が重要な要因として挙げられているが、本邦では問題となるような肥満症例が少なく、実際に飲酒や肥満がどの様にインスリン抵抗性に関わってくるのか不明な点も多い。【目的】肝脂肪化やインスリン抵抗性の要因を調べ、肝線維化への影響について検討する。【方法】217名のC型慢性肝炎患者において、耐糖能障害の程度と肝線維化および脂肪化の程度について検討した。インスリン抵抗性・膵β細胞機能は75g経口ブドウ糖負荷テスト(OGTT)を用いて検討した。全ての患者で肝生検を行い、肝線維化や肝脂肪化の程度はIBASイメージによって定量化した。【結果】糖尿病の治療歴を有している患者は9名認められた。残りの208名のOGTTの結果では、耐糖能障害は32.2% (67/208) に認められた。15名は糖尿病型(負荷後2時間後の血糖>200mg/dl) で52名は境界型(負荷後2時間後の血糖;140~200mg/dl)であった。インスリン抵抗性のマーカーであるHOMA-IRは、 糖尿病の患者では耐糖能障害のない患者および境界型の患者より優位に高かった(p<0.01)。また、早期のインスリン分泌のマーカーであるInsulinogenic nindex[△インスリン0~30分/△ブドウ糖0~30分]は糖尿病及び境界型の患者では耐糖能障害のない患者より優位に低かった(p<0.01)。Insulinogenic indexはインスリン抵抗性(HOMA-IR)の増大とともに低下した。 肝脂肪化率とHOMA-IR、肝線維化率とHOMA-IRには相関関係が認められたが、脂肪化率と肝線維化率には相関関係が認められなかった。HOMA‐IRを規定する因子としてBody mass indexが重要であった。【結論】C型慢性肝炎の肝線維化・肝脂肪化においてインスリン抵抗性が重要な要因であった。肝脂肪化と肝線維化の直接的な関係を示唆する結果は得られなかった。耐糖能障害の発症にはインスリン抵抗性に加え膵β細胞の機能障害が重要であった。
索引用語 インスリン抵抗性, 肝脂肪化