セッション情報 一般演題

タイトル 111:

Clostridium perfringens A型株が起炎菌と考えられた重症の感染性腸炎の1例

演者 佐々木 文郷(宮崎市郡医師会病院内科)
共同演者 山下 秀一(宮崎市郡医師会病院内科), 村山 真也(宮崎市郡医師会病院内科), 三好 かほり(宮崎市郡医師会病院内科), 岩切 章(宮崎大学医学部感染症学講座微生物学分野), 吉田 朱美(宮崎大学医学部感染症学講座微生物学分野), 林 哲也(宮崎大学医学部感染症学講座微生物学分野), 児玉 眞由美(宮崎大学医学部第二内科), 沼田 政嗣(宮崎大学医学部第二内科), 坪内 博仁(鹿児島大学大学院消化器疾患・生活習慣病学)
抄録 【はじめに】Clostridium perfringens は、ヒト・動物の大腸内常在菌であり、下水、河川、海、耕地などの土壤に広く分布する。ヒトの感染症としては、食中毒の他に、ガス壊疽、化膿性感染症、敗血症等が知られている。今回、われわれは Clostridium perfringens A型株が起炎菌と考えられた重症の感染性腸炎の1例を経験したので報告する。【症例】74歳 男性 慢性アルコール中毒で精神科入院中。渡航歴なし。元々便秘傾向であった。2004年6月、突然、腹痛、血性下痢・38度台の発熱が出現し、入院となった。身体所見では、40℃の発熱、腹部全体にわたり反張痛を伴う圧痛を認めた。血液検査では、WBC18400、CRP:14.75と高値であった。腹部造影CTで、小腸~大腸・直腸にかけ広範囲に腸管の拡張、壁肥厚の所見を認めた。感染性腸炎と診断し、血液培養・便培養を行い、絶食・補液管理とし、OVFX300mg/dayの内服を開始した。粘血便が続くため、入院翌日下部消化管内視鏡検査(以下CS)を施行(下行結腸まで挿入)。下行結腸からS状結腸は粘膜の血管透見性は消失し、著しい浮腫、易出血性で、S状結腸下部は縦走傾向を持つ白苔の付着した潰瘍を認めた。内視鏡所見・臨床経過よりアメーバ大腸炎を疑い、同日よりmetronidazole 2250mg/dayの内服を併用した。粘血便が続き中心静脈栄養管理とした。その後徐々に腹痛も改善し、粘血便も改善傾向となった。入院時施行した血液培養よりClostridium perfringensが検出され、Clostridium perfringensによる感染性腸炎を疑った。宮崎大学医学部感染症学講座微生物学教室へ糞便材料から分離されたClostridium perfringens の保有毒素遺伝子に基づいた型判定を依頼したところ、α毒素遺伝子のみが検出され、菌株はA型と考えられた。【結語】C型菌では、壊死性腸炎の報告もあるが、ほとんどの食中毒の原因となるA型菌は、一般的に症状が軽いとされている。下血を伴う感染性腸炎で、本症を念頭に入れておくことが重要であると考えられた。
索引用語 感染性腸炎, Clostridium perfringens