セッション情報 一般演題

タイトル 172:

画像で経過が追えた肝姪症の1例

演者 井上 恵(大分大学医学部消化器内科)
共同演者 姫野 克郎(大分大学医学部消化器内科), 西田 太一(大分大学医学部消化器内科), 高橋 祐幸(大分大学医学部消化器内科), 清家 正隆(大分大学医学部消化器内科), 藤岡 利生(大分大学医学部消化器内科), 上野 真一郎(大分大学医学部放射線科), 森 宣(大分大学医学部放射線科), 柴田 浩平(大分大学肝胆膵外科), 太田 正之(大分大学肝胆膵外科), 北野 正剛(大分大学肝胆膵外科), 林下 陽二(竹田市医師会病院), 橋本 剛(竹田市医師会病院)
抄録 症例は63歳、女性。2005年6月頃から右季肋部が出現したが、自然に軽快するため放置していた。同年7月15日、右季肋部痛が増悪した。このとき症状はNSAIDで軽快した。7月16日同様の激しい症状があり、近医に緊急入院。腹部CT検査で肝腫瘤性病変が疑われた。7月19日当院、肝胆膵外科を受診。このとき肝腫瘤性病変のみでWBC 6100/mm3(Eo 6.7%)と好酸球増多症は認めなかった。上部、下部内視鏡検査では異常なく、炎症性偽腫瘍を疑い経過をみていた。9月21日、肝胆膵外科を再度受診。WBCの上昇、好酸球増多(58%)があり、肝寄生虫症が疑われため、9月29日当科に入院となった。入院時、右季肋部や下腹部に軽度の腹痛があったが、NSAIDや抗コリン剤で軽快した。入院時検査成績ではWBC8500/mm3(Eo 56.4%)と著しい好酸球増多を呈し、GOT 23 IU/L 、GPT 24 IU/L、ALP 402 IU/L、γ-GTP 55 IU/L、CRP 0.37 mg/dlと胆道系酵素の軽度上昇を認めた。抗寄生虫抗体では肝姪(++)、ブタ回虫(+)であった。便中虫卵は陰性であった。腹部CT検査では、7月22日、S5を中心に扇状に広がる低吸収域を呈していたが、9月にはS5の扇状の低吸収域は縮小し、S5、S8の周囲に多発する低吸収域が見られ、淡い周囲の早期濃染が認められた。宮崎大学医学部寄生虫学講座による血清診断により肝姪症と確定診断し、10月26日トリクラベンダゾ-ルを内服し退院となった。症状は軽快し、外来で腹部CTを含め経過観察中である。本症例は農業に従事しており、牛の飼育歴があった。衛生状態が改善した現在では肝寄生虫症は比較的稀であるが本症例のように、炎症性偽腫瘍や悪性腫瘍との鑑別診断に苦慮する例がある。本例では確定診断前後の画像診断の経過と治療前後の経過が追えた貴重な症例であり、文献的考察とともに報告する。
索引用語 肝姪症, 腹部CT