セッション情報 一般演題

タイトル 93:

間質性肺炎に対する免疫抑制剤治療中にHBs抗原が陽性化したHBs抗体陽性の1例

演者 中村 憲一(宮崎大学 医学部 消化器血液学講座)
共同演者 蓮池 悟(宮崎大学 医学部 消化器血液学講座), 中澤 潤一(宮崎大学 医学部 消化器血液学講座), 熊谷 公太郎(宮崎大学 医学部 消化器血液学講座), 三池 忠(宮崎大学 医学部 消化器血液学講座), 楠元 寿典(宮崎大学 医学部 消化器血液学講座), 沼田 政嗣(宮崎大学 医学部 消化器血液学講座), 児玉 眞由美(宮崎大学 医学部 消化器血液学講座), 永田 賢治(宮崎大学 医学部 消化器血液学講座), 宇都 浩文(宮崎大学 医学部 消化器血液学講座)
抄録 【症例】83歳男性。主訴は黄疸・全身倦怠感・食欲低下。1965年(43歳頃)に急性肝炎といわれた(詳細不明)。1996年に呼吸器内科にて間質性肺炎と診断された際にはAST 20、ALT 12、血小板数19.1万/μl、でHBs抗原陰性、HBs抗体陽性であった。2000年より間質性肺炎に対してプレドニゾロン10mg、2001年よりサイクロフォスファマイド50mgが内服開始された。2002年の血液検査ではAST 29、ALT 29で肝機能異常なく、HBs抗原陰性、HBs抗体陽性は持続していた。以後、間質性肺炎は寛解・再燃を繰り返すも、トランスアミナーゼは基準値内で推移していた。2006年2月7日の定期血液検査でT Bil 1.1、AST 598、ALT 665、LDH 588と肝障害を認めたため近医入院となった。 HBs抗原は陽性化し、HBs抗体は陽性(抗体価18.8)のままで、HBe抗原陰性、HBe抗体陽性、HBV-DNA (PCR) 6.8 log copies/ml、HBc抗体 (CLIA)陽性(抗体価13.6)、IgM HBc抗体陰性、他の肝炎ウイルスマーカーと抗核抗体は陰性であった。肝庇護療法・安静にても改善みられず黄疸・全身倦怠感が出現したため同月17日よりラミブジンの投与を開始した。その後3月1日にはT Bil 21.5、AST 368、ALT 553、PT 45%、HPT 46%と劇症化が危惧されたため翌2日当科転院となった。入院後はラミブジンの継続投与によりHBV-DNA量は測定感度以下まで減少し、4月2日T Bil 4.0、AST 56、ALT 45、LDH 263、PT 73%と改善傾向であるが、HBs抗原とHBs抗体は陽性が持続している。【考察】今回の肝障害の原因として、HBV再感染の可能性も否定できないものの、経過からHBs抗体陽性例の免疫抑制療法に伴うHBVの再活性化の可能性が高いと考えられた。HBs抗体陽性例においては、肝移植後や骨髄移植後の強力な免疫抑制療法と比較して、通常量の免疫抑制療法におけるHBVの再活性化は稀と考えられるが、HBs抗体陽性例に対する免疫療法時には注意すべき副作用と考えられたため報告する。
索引用語 HBV, 再活性化