セッション情報 シンポジウム3

タイトル S3-007:

Body mass index(BMI)別に見たHCV関連肝疾患の長期予後

演者 宇都 浩文(宮崎大学 医学部 消化器・血液学)
共同演者 楠元 寿典(宮崎大学 医学部 消化器・血液学), 坪内 博仁(鹿児島大学 大学院 消化器疾患・生活習慣病学)
抄録 【背景と目的】生活習慣病の基本病態であるインスリン抵抗性やそれを惹起する内臓脂肪蓄積は慢性肝疾患の病態を進展させる因子として知られている。一般検診ではBMIがそれらの因子を簡便に推測できる方法の一つであり、BMIとC型慢性肝炎の病態進展との関連性も報告されている。本研究では、HCV持続感染者と既感染者をBMI別に比較して、BMIがHCV関連肝疾患の病態進展の予測因子となるかを明らかにすることを目的とした。【対象】HCV抗体陽性のHCV高浸淫地区住民を対象とした。HCV持続感染者と既感染者別に1995年のBMIを25以上と25未満に分け、1995年の肝機能とその後10年間の予後を検討し、HCV感染者におけるBMIの影響を解析した。【結果】HCV持続感染者のうちBMI25以上は男35名、女71名、BMI25未満は男159名、女242名で平均年齢はそれぞれ63.8歳、66.2歳でBMI25未満に高齢者が多く含まれていた。しかし、HCVコア抗原量、セロタイプ、AST、ALT(42.0±28.8 vs. 44.1±43.5)、γGTPに差はなかった。一方、HCV既感染者241名をBMI別に比較すると、BMI25以上の群はBMI25未満に比較してAST、ALT(24.6±16.3 vs. 18.6±11.0, P=0.002)、γ-GTPが有意に高値であった。また、BMI25以上(BMI25未満)のHCV持続感染者における10年間累積の、A.全死亡率、B.肝癌発症率、C.肝癌を含む肝疾患死亡率、D.肝疾患以外の死亡率はそれぞれA.24.0%(27.6%)、B.7.7%(5.3%)、C.13.2%(10.9%)、D.7.0%(17.9%)で、BMI別での明らかな有意差はないものの、BMI25以上群は全死亡に占める肝疾患死亡の割合が、BMI25未満より多い傾向であった。【考察】今回の様な比較的高齢者を対象とした場合には、BMIはHCV持続感染者の肝機能への影響はほとんどないものの、予後に関しては、肝疾患死亡にある程度悪影響を与える可能性が示唆された。今後HCV関連肝疾患患者の高齢化が進むことを考えれば、HCV感染者のBMIコントロールはこのような対象者の予後を改善する可能性がある。
索引用語 BMI, HCV高浸淫地区住民