セッション情報 | 一般演題 |
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タイトル | 143:特異な発育を呈し、術前診断が困難であった膵腺房細胞癌の一例 |
演者 | 松岡 英彦(産業医科大学 消化器・代謝内科) |
共同演者 | 山崎 雅弘(産業医科大学 消化器・代謝内科), 田口 雅史(産業医科大学 消化器・代謝内科), 田代 充生(産業医科大学 消化器・代謝内科), 山本 光勝(産業医科大学 消化器・代謝内科), 木原 康之(産業医科大学 消化器・代謝内科), 大槻 眞(産業医科大学 消化器・代謝内科), 岡本 好司(産業医科大学 消化器・内分泌外科), 永田 直幹(産業医科大学 消化器・内分泌外科) |
抄録 | 症例は、79歳男性。2003年3月にスクリーニング目的で施行された腹部超音波検査で、臍部右側に径 70 mm大の低エコー腫瘤を指摘された。腹痛などの自覚症状はなく、腫瘤は弾性硬、表面平滑で可動性を有していた。腹部造影CTでは膵鉤部下方、十二指腸下行脚内側、水平脚上方に内部が充実性で辺縁平滑な造影効果のある腫瘤を認めた。上部・下部消化管内視鏡検査、小腸造影では異常所見はなく、精査のため5月に当科へ入院した。ERCPでは膵管の狭窄や途絶はなく、膵鉤部の膵管の圧排を認めるのみであった。血管造影では下膵十二指腸動脈からの造影で腫瘍血管増生を認めた。EUSでは内部均一な分葉状の低エコー腫瘤であり、辺縁は整で他臓器への浸潤は認めなかった。腫瘍マーカーは正常で、画像所見からは膵管癌は否定的であったが、膵島腫瘍などの悪性疾患を否定できなかった。診断も兼ねて外科的治療を検討されたが、本人が手術を希望されなかったため経過観察とした。2年後の2005年9月頃より腫瘤の増大傾向があり、腫瘤部の痛みが出現するようになったため手術を希望され、10月に当科へ入院した。血液検査ではエラスターゼ-1、トリプシン、PSTIの上昇を認めたが、アミラーゼ、リパーゼ、CA19-9の上昇はなかった。腫瘤の可動性が大きく、腹部CTで膵頭部下方や十二指腸と接する造影効果が強い不均一な分葉状腫瘤で、血管造影では前回と同様の腫瘍濃染像を認め、GISTを第一に考えたが、膵腫瘍も完全には否定できなかった。明らかな転移はなく、当院消化器・内分泌外科で腫瘤摘出術を行った。術中所見では腫瘤は径 8×7 cm大で、十二指腸と膵臓に接し、病理組織診断で膵腺房細胞癌と診断された。腺房細胞癌は膵腫瘍の中でも比較的まれとされている。本症例は腫瘍が膵鉤部を起点に瘤状に膵外発育し、医学中央雑誌でこれまでに報告がみられなかったことから、報告する。 |
索引用語 | 膵腫瘤, 発育形式 |