セッション情報 一般演題

タイトル 123:

上強膜炎、結核性紅斑を合併した潰瘍性大腸炎の一例

演者 前川 智(産業医科大学 消化器・代謝内科)
共同演者 山崎 雅弘(産業医科大学 消化器・代謝内科), 上田 城久朗(産業医科大学 消化器・代謝内科), 久米 惠一郎(産業医科大学 消化器・代謝内科), 木原 康之(産業医科大学 消化器・代謝内科), 芳川 一郎(産業医科大学 消化器・代謝内科), 大槻 眞(産業医科大学 消化器・代謝内科)
抄録 症例は62歳、女性。41歳で潰瘍性大腸炎(全結腸型、重症)を発症し、以降再発・緩解を繰り返していた。2005年9月はじめより血便の増悪(10回/日)を認め、9月13日より右眼球結膜の充血、9月20日より37度台の発熱、両下腿に有痛性の紅斑が出現し、9月21日当科入院となった。右眼球結膜の充血、両下肢の紅斑は眼科、皮膚科受診の結果、それぞれ右上強膜炎、結節性紅斑と診断され、潰瘍性大腸炎の増悪に伴って合併したものと考えられた。入院時の血液検査ではWBC 10,400/μl, RBC 323×104/μl, Hb 9.2 g/dl, Ht 27.3 %, Plt 43.4×104/μl,TP 6.8 g/dl, Alb 3.3 g/dl,CRP 7.9mg/dlと炎症反応、正球性正色素性貧血、アルブミン値低下を認めた。S状結腸内視鏡検査ではびまん性に易出血性の顆粒状粘膜を呈しており、不整形の深い潰瘍が多発していた。入院後、低残渣食による食事療法、ステロイド投与(プレドニゾロン40mg/日)、顆粒球吸着療法(1回/週)、高圧酸素療法を開始した。第3病日には血便、発熱は消失し、排便回数も1~2回/日となり、第10病日にはCRPも正常化した。上強膜炎、結節性紅斑は入院後軽快傾向を示し、それぞれ第21病日、第7病日に消失し、弟36病日に退院となった。その後12月中旬に結節性紅斑が再度出現したが、ステロイド投与(プレドニゾロン40mg/日)により約2週間で消失した。上強膜炎は、関節リウマチをはじめとする膠原病、感染症に合併するものがあるが、原因不明の症例も多く、治療にはステロイドが用いられる。結節性紅斑は、下肢、特に下腿に炎症性潮紅を伴う拇指頭大までの有痛性の皮内硬結が多発してみられる皮膚症状であり、溶連菌を主体とした上気道感染後に発症するものや、結核、サルコイドーシス、ベーチェット病、潰瘍性大腸炎やクローン病などに合併するものもある。本症例においては、上強膜炎、結節性紅斑は潰瘍性大腸炎の消化管外合併症と考えられ、示唆に富む症例と考えられたので報告する。
索引用語 潰瘍性大腸炎, 合併症