抄録 |
今回リンパ球減少症および低γ-グロブリン血症を伴い、ステロイドパルス療法が奏功した原因不明の重症急性肝炎の1例を経験したので報告する。症例は23歳、男性。2005年11月下旬より褐色尿を自覚し、眼球結膜の黄染を指摘され、12月13日に近医を受診した。急性肝炎の診断で保存的加療が行われたが、黄疸が持続し、その後38~39度の発熱も出現し、精査加療目的で12月25日に当院転院となった。飲酒歴、薬剤服用歴なし。入院時WBC 7,300/μl(Seg 69.0 %, Stab 13.0 %, Lymph 2.0 %, Mono 13.0 %, Aty-Ly 1.0 %, Myelo 2.0 %), TP 5.0 g/dl, Alb 3.5 g/dl(γ-gl 12.9 %),T-bil 29.9 mg/dl, D-bil 20.0 mg/dl, AST 437 IU/l, ALT 630 IU/l, PT% 27.7 %,IgG 787 mg/dl, IgA 78 mg/dl, IgM 35 mg/dl と著明な肝障害、リンパ球減少および低γ-グロブリン血症を認めた。また、A型、B型、C型、E型肝炎ウイルス、EBウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス等のウイルスマーカーはすべて陰性で、抗核抗体、抗ミトコンドリア抗体は陰性、セルロプラスミンは正常範囲であった。入院後保存的加療を継続したが、肝障害の悪化を認めたため、第5病日よりプレドニン40mg/日を開始した。しかし第8病日にはT-bil 32.6 mg/dl, AST 516 IU/l, ALT 1103 IU/l, PT% 25.8 %とさらに肝障害の悪化を認め、同日よりステロイドパルス療法を行ったところ、第11病日にはT-bil 24.6 mg/dl, AST 348 IU/l, ALT 840 IU/l, PT% 35.0%と肝障害は改善した。その後プレドニンに変更し、投与継続したが、肝障害は徐々に改善し、第51病日にはT-bil 3.0 mg/dl, AST 23 IU/l, ALT 24 IU/l, PT% >100.0%となった。これに伴ってリンパ球減少やγ-グロブリン値も改善した。急性肝炎の原因に関しては、肝生検による精査も行ったが、明らかにならなかった。これまでリンパ球減少や低γ-グロブリン血症を伴った急性肝炎の報告は無く、本例のリンパ球減少や低γ-グロブリン血症の成因は不明であった。また、急性肝炎の原因も不明であったが、このような原因不明の重症肝炎に対して、ステロイドパルス療法は考慮すべき治療であり、時期を逸することなく施行すべきであると考えられた。 |