共同演者 |
有尾 啓介(佐賀大学 医学部 内科), 小林 弘美(佐賀大学 医学部 内科), 熊谷 貴文(佐賀大学 医学部 内科), 江口 有一郎(佐賀大学 医学部 内科), 安武 努(佐賀大学 医学部 内科), 尾崎 岩太(佐賀大学 医学部 内科), 水田 敏彦(佐賀大学 医学部 内科), 林 真一郎(佐賀大学 医学部 内科), 佐野 文子(千葉大学 真菌医学研究センター), 藤本 一眞(佐賀大学 医学部 内科) |
抄録 |
【症例】29歳男性。既往歴に特記事項なし。2005年8月より全身倦怠感、咳嗽、発熱出現。前医にてWBC 35100/μl、RBC 181万/μl、Hb 12.0 g/dl、胸腹部CTにて頸部、腹腔内リンパ節の腫大が多数認められ、呼吸状態不良、pre-DIC所見があることから血液疾患を疑い全身化学療法が行われた。しかし腹痛症状や呼吸状態の悪化が認められたため、同年10月当院転院となった。入院時WBC 12800/μl, RBC 303万/μl, Hb 9.5 g/dl, Ht28.3%, Plt 10.9万/μl, PT 79.9%, Alb 2.3g/dl, BUN 40.4 mg/dl, Cr 1.50mg/dl, T-Bil 3.0mg/dl, AST 64 IU/l, ALT 134 IU/l, ALP 870 IU/l, γ-GTP 276 IU/l, CRP 3.41mg/dl, IL-2R 2020U/ml, HBs-Ag(-), HCV-Ab(-), HIV-Ab(-), CMV-7HR(-), Cryptococcus-Ag(-), Carinii-DNA(-), Aspergillosis-Ag(-), β-Dグルカン 29.0pg/ml。胸部CTにて両肺にびまん性浸潤影、スリガラス影を認め、腹部CTでは腹腔内リンパ節腫大の他、肝門部から肝末梢にかけて門脈周囲に広がる低吸収域を認めた。腹部USでも同様に門脈周囲に低エコー領域を認めたため同部位から肝生検を行ったところ、大型の酵母菌とその周囲に肉芽腫性病変を多数認めた。また経気管支肺生検でも同様の所見が観察され、深在性真菌症と診断した。アンホテリシンB、ST合剤、VCZにて加療を行い、自覚症状およびCT上の肺・肝病変の改善が認められた。現時点で原因真菌は同定されていない。【考案】腹部真菌感染症はまれな疾患であるが、通常は免疫不全状態で認められ、しばしば致死的な経過をとる。US、CTでの画像所見は、通常肝脾内散在性結節性病変を呈するとされている。しかし本症例では結節性病変ではなく門脈枝に沿った病変として描出され、一般的な肝内真菌感染症とは異なる画像所見を呈したまれな症例と考えられたので報告する。 |