セッション情報 パネルディスカッション4(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器がん検診学会合同)

膵癌早期発見に向けた取組み

タイトル 消PD4-7:

膵癌を合併した分枝型IPMN経過観察例からみた膵癌早期発見の問題点と必要な取組み-北海道多施設調査に基づく膵癌診断の現状

演者 丹野 誠志(琴似ロイヤル病院・消化器病センター)
共同演者 真口 宏介(手稲渓仁会病院・消化器病センター), 河上 洋(北海道大・消化器内科)
抄録 【目的】膵癌高危険群観察例における合併膵癌の診断過程を知ることは早期発見に必要な取組みを解決する糸口となる可能性がある。今回、効率的な膵癌早期発見に繋がる取組みについて検討するため、分枝型IPMN経過観察例に合併した膵癌がどのような症状、診断法、病期でこれまでに発見されているのかを北海道多施設調査を基に解析した。【対象と方法】北海道17施設で1年以上の経過観察が施行された838例を対象に膵癌合併例の特徴と発見契機、画像診断法を検討した。【結果】膵癌合併は26例(3.1%)、平均年齢71.4歳、男性11例、女性15例、平均観察期間48.0か月、膵癌標準化罹患比15.2(95%信頼区間9.9-22.3、p<0.001)であった。膵癌はIPMNと離れた頭部5例(19.2%)、体尾部21例(80.8%)に合併し、IPMNとの位置関係は頭側6例(23.1%)、尾側20例(76.9%)、腫瘍径平均25.4mm、JPS stageはI 2例(7.7%)、II 5例(19.2%)、III 5例(19.2%)、IVa 10例(38.5%)、IVb 4例(15.4%)、診断時症状は無症状17例(65.4%)、腹痛8例(30.8%)、倦怠感1例(3.8%)、診断契機画像検査はCT 17例(65.4%)、US 1例(3.8%)、MRCP 1例(3.8%)、FDG-PET 1例(3.8%)、腫瘍マーカー上昇を診断契機としたのは4例(15.4%)であった。検査間隔は3か月7例(26.9%)、6か月11例(42.3%)、1年7例(26.9%)で、これらと膵癌stageとの間に有意な相関はみられなかった。【結論】多施設調査では経過観察例における診断契機画像はCTが最も多く、Stage I膵癌7.7%、検査間隔は短くても必ずしも早期発見に繋がっていないこれまでの状況が認められた。分枝型IPMN症例における膵癌早期発見への今後の取組みとしては、高危険群という認識を強くもち膵癌合併を常に念頭に置いた上で腫瘍マーカーや血糖値を監視し、画像変化が疑われた場合には精度の高い画像検査を追加施行する必要があると考えられた。
索引用語 膵癌, IPMN