抄録 |
胆嚢癌との鑑別が困難であった集簇型コレステロールポリープの1例鹿児島市医師会病院 外科 豊川建二, 門野潤, 大迫政彦, 石崎直樹, 柳政行, 海江田衛, 久米村秀, 田畑峯雄症例は63歳女性。主訴は心窩部、背部痛。腹部超音波検査で、胆嚢体部腹腔側に径20mmの分葉状の一部低エコーな部位を含む広基性の高エコー腫瘤と漿膜面のひきつれを認めた。MRIでは径14mmの乳頭状、顆粒状腫瘤で、有意な壁肥厚と壁外浸潤はみられなかった。超音波内視鏡では胆嚢体部に径20mmの広基性、内部に高エコーを混じる低エコーな腫瘤を認めた。mp~ss胆嚢癌を疑い手術を施行した。術中、漿膜面は平滑で腫瘤は触知しなかった。術中エコーでは20mmの分葉状の広基性な等エコー病変を認めた。一部最外層のみが保たれていたが、ほぼ胆嚢壁構造は保たれたmp胆嚢癌と診断し拡大胆嚢摘出術を行った。術中迅速組織診で胆嚢コレステロールポリープと診断された。永久組織診標本でも、集簇性のコレステロールポリープと確定診断された。各種画像診断の進歩にもかかわらず、胆嚢隆起性病変の鑑別と胆嚢癌の壁深達度の確診に難渋することがある。胆嚢隆起性病変は15mm以上の大きさを有する場合、悪性の可能性が高いことは一般に知られており、最大径は良悪性の鑑別に重要である。胆嚢コレステロールポリープが集簇する病態の報告は珍しいが、腹部超音波検査で輝度の高い広基性隆起性病変を認めた際には、鑑別すべき疾患の一つとして念頭におかねばならない。 |