セッション情報 シンポジウム2

タイトル S2-006:

自己免疫性膵炎の病態と予後

演者 植木 敏晴(福岡大学筑紫病院 消化器科)
共同演者 大谷 圭介(福岡大学筑紫病院 消化器科), 清水 愛子(福岡大学筑紫病院 消化器科), 藤村 成仁(福岡大学筑紫病院 消化器科), 松井 敏幸(福岡大学筑紫病院 消化器科), 川本 研一郎(福岡大学医学部病理学教室), 尾石 弥生(尾石内科胃腸科医院)
抄録 【目的】自己免疫性膵炎の病態と臨床経過について検討した.【方法】2006年3月までに当科で経験した自己免疫性膵炎11例(男性8例,女性3例)を対象とした.平均年齢は46歳(17歳から79歳)であった.膵生検は7例に行なった.検討項目:1.症状,2.併存疾患,3.膵外病変,4.IgG4,5.臨床経過である.【成績】1.症状:多く(8例)が膵炎で発症していた.黄疸を3例に認めた.2.炎症性腸疾患4例(クローン病3例,潰瘍性大腸炎1例),慢性関節リウマチ2例,尋常乾癬1例,原発性胆汁性肝硬変症1例,糖尿病3例であった.炎症性腸疾患3例の平均年齢は26歳(17歳から42歳)で若年であった.3.硬化性胆管炎を5例に認めた.4.IgG4は97~20300 mg/dlであったが,炎症性腸疾患併存例は46~266 mg/dlと比較的低値であった.5.臨床経過:閉塞性黄疸の3例は,全例US,CTで本症が疑われたためERCPで診断後,ERBDを留置した.その後3例とも軽快した.ステロイドの投与は1例のみで,その後中止できたが,糖尿病は改善せず,インスリン治療は継続中である.重症膵炎の1例は,蛋白分解酵素阻害剤と抗生剤の持続動注療法を施行し軽快し,IgG4も漸減した.炎症性腸疾患並存例4例中2例は軽症膵炎で発症したが,2例は無症状であった.1例は胆管狭窄があり,膵癌が否定できず膵頭十二指腸切除術が施行された.尋常乾癬の1例は冠動脈病変も伴っていた.ステロイド治療を行なったが,約1年後に再発した.IgG4は低値であった.残りの2例はステロイドを投与せずに軽快した.硬化性胆管炎5例中1例はステロイド治療後改善し,3例はステロイドの投与なしに改善した.残りの1例は切除された.全11例中1例は再発したが,その後軽快した.切除された1例を含めて残りの10例は再発していない.【結論】一般に自己免疫性膵炎は高齢,男性に好発するとされているが,今回の検討では若年例もあり,臨床像は様々であった.ステロイドを投与せずに軽快する症例もあることよりステロイド治療の選択は慎重にするべきである.
索引用語 自己免疫性膵炎, 病態