セッション情報 一般演題

タイトル 38:

閉塞症状を契機に発見された原発性十二指腸癌の一例

演者 吉澤 直之(新小倉病院 内科)
共同演者 古賀 有希(新小倉病院 内科), 武市 昌郎(新小倉病院 内科), 松原 不二夫(新小倉病院 内科), 野村 秀幸(新小倉病院 内科), 萱島 理(新小倉病院外科), 井上 重隆(新小倉病院外科), 堤 宣翁(新小倉病院外科), 小田 義直(九州大学形態機能病理)
抄録 症例は61歳、男性。H17年3月頃より心窩部痛と約10kgの体重減少を認めるも放置していた。H17年10月中頃より食後の嘔吐出現し、その回数が増加するようになった。11月2日頻回の嘔吐を繰り返し、改善しないため救急車にて当院搬入、入院となる。入院時腹部X-Pでは胃泡と十二指腸球部の鏡面像を認めた。腹部CTでは膵頭部から膵鉤部にかけ約4cm大の不整な腫瘤を認め十二指腸内腔は狭小化し、胃から十二指腸下行脚は著明に拡張していた。入院後挿入した胃管チューブからは、一日約4000mlの排液が持続した。また腹部CT上肝内胆管、総胆管は拡張するも黄疸の出現なかった。ガストログラフィンによる上部消化管造影検査では十二指腸第2部に全周性の狭窄病変を認め、造影剤は肛門側に全く流出しなかった。上部消化管内視鏡検査では、十二指腸第2部にほぼ全周性に発育する腫瘍を認め、表面は発赤し、易出血性であった。生検病理標本にて中分化型腺癌と診断された。術前診断では原発性十二指腸癌と十二指腸乳頭癌の鑑別はできず、治療として幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(PpPD)を施行した。開腹所見では腫瘤を十二指腸第2、3部に触知し、十二指腸周囲や胆嚢漿膜面に腹膜播種が見られた。切除固定標本では十二指腸第2部に全周性の2型の腫瘍を認め、肉眼的に十二指腸乳頭は同定できなかった。病理組織学的所見では中分化から低分化型の腺癌で、全層に腫瘍細胞の浸潤を認めリンパ管侵襲は高度であった。また膵頭部にも直接浸潤を認めた。十二指腸乳頭開口部の粘膜には腫瘍細胞を認めず、乳頭内の一部に見られる腫瘍細胞はリンパ管侵襲によることから原発性十二指腸癌と診断した。原発性十二指腸癌は比較的稀な疾患で全消化管癌の0.3~0.4%と言われ、その組織型は大部分が高分化型腺癌であり中分化型、低分化型腺癌の報告は少ない。今回我々は閉塞症状を契機に発見された十二指腸原発の中分化から低分化型腺癌を経験したので文献的考察と共に報告する。
索引用語 原発性十二指腸癌, 閉塞症状