セッション情報 シンポジウム1(肝臓学会・消化器病学会合同)

分子標的治療の限界を超える新しい肝癌治療法の開発

タイトル 肝S1-6:

進行肝細胞癌におけるSorafenibを用いた集学的治療の展開

演者 土谷 薫(武蔵野赤十字病院・消化器科)
共同演者 安井 豊(武蔵野赤十字病院・消化器科), 泉 並木(武蔵野赤十字病院・消化器科)
抄録 【目的】進行肝細胞癌に対する分子標的薬(Sorafenib)治療は世界的に認知されているが単独投与では限界がある。今回我々はSorafenib投与後長期生存例を検討し今後の集学的治療展開を考察した。
【方法】当院にてSorafenibを導入した97例中2011年9月までに投与を開始した81例を対象とした。投与後180日以上生存を長期生存(LS)群とし、Sorafenib開始前因子および治療経過について検討した。治療中血清AFP・PIVKA-II・VEGFを毎月測定し、投与4-8週後・以降8-12週毎にMDCTを施行しmRECIST基準で判定した。
【成績】症例は平均年齢70歳、男性61例・女性20例、HCV陽性50例・HBV陽性8例・NBNC23例、Child A 75例・B 6例、VP≧3陽性20例、遠隔転移陽性26例。全症例の生存期間中央値 215日、内服期間中央値138日であった。血清VEGF濃度が2ヶ月以内に減少した群では累積生存率が良好であった(MST442日, p=0.0064)。LS群(n=47)は非LS群(n=34)に比しSorafenib開始量に差はなく、内服期間が有意に長かった(LS群257日, 非LS群71日, p<.0001)。LS群では投与期間中血清VEGF濃度1000pg/mL以下の症例(n=40)は累積生存率が良好であった(MST563日,p=0.031)。投与前VP≧3またはIVC内腫瘍栓陽性のLS例は22例中4例、1例は400mg/日開始10日目薬疹にて中止後CR、3例は異時的に放射線治療・殺細胞性抗がん剤治療を追加し生存期間中央値412日であった。AFPおよびVEGF上昇時にTAI・TACE・放射線治療・殺細胞性抗癌剤への一時的な変更、いずれかを施行しSorafenib内服を継続した12例の生存期間中央値は434日であった。
【結論】VP3-4やIVC浸潤を伴う進行肝細胞癌におけるSorafenib治療では早期CR例以外、放射線治療や動注療法の併用や変更が検討されるべきである。血清VEGF濃度はlong SDの目安となり、上昇傾向時に他薬剤・治療法の併用や治療法変更を検討することにより進行肝細胞癌の生存率は向上する。
索引用語 進行肝細胞癌, 分子標的薬