抄録 |
【目的】比較的早期に発見された膵癌像と考えられるpStageI症例ならびに上皮内癌の臨床病理学的背景を検討し,膵癌の早期診断戦略として超音波検診の精度向上に関する試みを紹介する.【小膵癌の臨床病理学的検討】対象は当科にて精査後,切除されたpStageI膵癌7例,上皮内癌5例,計12例.1) pStageI膵癌の平均年齢は68.3歳,男女比は4:3,初発症状は腹痛14%,症状なし86%,発見契機は検診72%,耐糖能悪化28%(画像診断別ではUS72%,CT14%,MRCP14%),生化学的所見では血清膵酵素上昇を28%,腫瘍マーカー上昇を14%に認めた.上皮内癌では平均年齢69.4歳,男女比は3:2,初発症状は腹痛40%,症状なし60%,発見契機は検診40%,外来受診40%,血清膵酵素上昇20%(画像診断別ではUS40%,CT40%,MRCP20%),生化学的所見では血清膵酵素上昇と腫瘍マーカー上昇をそれぞれ20%に認めた。2)pStageI膵癌の占拠部位は頭部2,体尾部5,最大径は9~13mmに分布し,主膵管進展は43%,CISやAHなどの上皮内病変の合併は28%に認められた.上皮内癌の占拠部位は頭部2,体尾部3,膵管内進展範囲は20~60mmに分布しており,4例では周囲にAH,2例では粘液上皮過形成を合併していた.【超音波検診の精度向上】以上の検討により小膵癌では超音波検診が主な発見契機となっており,腫瘤像の描出のみならず主膵管内進展や上皮内病変を反映した膵管拡張や局所的な分枝膵管の拡張所見が異常所見として捉えられていることが明らかとなった.当院では1985年4月より施設検診の一環として超音波検診を施行(年間受診者15000名)しているが,2006年度より精度向上のため1)膵管拡張、膵嚢胞など異常所見が発見された際の事後管理の徹底,2)院内検討会や市内関連健診機関での講演会による疾患知識の啓蒙活動,3)スクリーニング技術向上のため院内外でのHands-onなどを行っている.以後5年間において発見された膵癌は12例であり,pStageIと上皮内癌がそれぞれ1症例含まれていた. |