抄録 |
腹腔鏡下胆嚢摘出術(LC)は胆嚢結石症に対する標準術式となっているが、手技は煩雑なため開腹移行が問題となっている。そこで当科におけるLCにおける開腹移行について検討した。【対象】LCを施行した3,954例を対象として、開腹移行の要因について検討した。対象疾患は胆嚢結石症3,722例、胆嚢腫瘍232例で、急性胆嚢炎556例、慢性胆嚢炎400例、胆嚢癌31例を含んでいた。また1,575例(39.8%)で、胃切除93例や胆嚢切石3例など、延べ2,094回の開腹既往歴を有していた。なおLC導入初期には症例を限定していたが、1994年以降は、明白な胆嚢癌症例を除く全ての症例に施行した。また急性胆嚢炎例では、ドレナージを行わずに原則として入院24時間以内に手術を施行した。【結果】開腹移行例は3,954例中74例(1.87%)で、その要因は癒着剥離困難43例、進行期胆嚢癌判明14例、出血10例、胆管損傷3例、腸管損傷および機器の不具合2例であった。なお癒着剥離困難で開腹移行した理由は、急性・慢性胆嚢炎による癒着剥離困難37例、および既往手術による癒着剥離困難6例であった。また胃切除既往例で開腹移行したのは93例中11例(11.8%)で、うち既往手術による癒着剥離困難は5例であった。また疾患別の開腹移行を検討すると、急性胆嚢炎例では癒着剥離困難などのため556例中42例(7.55%)で、慢性胆嚢炎例では400例中21例(5.25%)で、開腹既往例では1,575例中35例(2.22%)で、胆嚢腫瘍では232例中16例(6.90%)で開腹移行した。またいずれの項目を持たない1,953例では、開腹移行したのは6例(0.31%)のみであった。【結論】LCは手技に習熟すれば、急性・慢性胆嚢炎例および上腹部開腹既往例を含む、ほぼ全ての胆嚢摘出例に適応がある。しかし、腹腔鏡下に対処できない場合や重篤な偶発症が生じた場合には、開腹手術へ躊躇せずに移行することが大切である。 |