セッション情報 |
ポスターセッション(消化器病学会)
胆道-症例報告2
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タイトル |
消P-505:早期胆嚢癌を合併した漏出性胆汁性腹膜炎の1例
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演者 |
神賀 貴大(仙台逓信病院・外科) |
共同演者 |
富永 剛(帯広第一病院・外科), 海野 倫明(東北大大学院・消化器外科学) |
抄録 |
【背景】結石などの明らかな原因や基礎疾患がなく、胆嚢炎はあっても軽度で、胆嚢穿孔を生じる疾患を特発性胆嚢穿孔という。特発性胆嚢穿孔に類似するが、明らかな穿孔をない疾患として漏出性胆汁性腹膜炎がある。今回、我々は早期胆嚢癌を合併した漏出性胆汁性腹膜炎を経験した。【症例】76歳、男性。夕食後より腹痛が出現し、翌日の朝方に腹痛が増強したため救急外来を受診した。腹部CTでは胆嚢は腫大して造影効果のある軽度壁肥厚を認めた。肝周囲に少量の腹水貯留を認めた。MRCPでは胆嚢の腫大と総胆管の軽度拡張を認め、胆嚢周囲と脾臓周囲に液体貯留を認めた。画像診断上、胆嚢結石は認めなかった。急性胆嚢炎と判断し、腹腔鏡下で手術を行なった。手術所見は腹腔全体に胆汁が貯留し、胆嚢は著明に腫大していたが、胆汁の流出はなかった。胆嚢を摘出し、腹腔全体を洗浄した。胆嚢管からの術中胆道造影では主膵管が造影され、膵胆管合流異常の存在が示唆された。胆嚢の肉眼的所見では結石と明らかな穿孔はなく、粘膜は発赤を呈し、顆粒状・粗造であった。病理組織学的検査では粘膜上皮はびらん状に欠落していたが、腺管とRokitansky-Achoff sinus(RAS)の上皮に強い異型が生じていた。間質浸潤がないsevere dysplasia/carcinoma in situと診断した。病変は胆嚢体部から底部に広く分布しており、RASに沿って漿膜下まで進展していた。術後経過は合併症なく経過良好で術後第7病日に退院した。【考察】本症例は胆嚢に穿孔を認めず、漏出性胆汁性腹膜炎と診断した。本症例には早期胆嚢癌と膵胆管合流異常が合併していた。前者のRASに沿った漿膜下層までの進展に後者の逆流膵液による組織障害が加わって胆嚢壁の菲薄化が起こり、胆汁が漏出したと考えられた。【結語】本邦において早期胆嚢癌と膵胆管合流異常が胆汁漏出の原因となっている漏出性胆汁性腹膜炎の報告はなく、本症例がはじめての報告例である。 |
索引用語 |
漏出性胆汁性腹膜炎, 早期胆嚢癌 |