セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

膵臓-基礎1

タイトル 消P-511:

ゲムシタビン感受性の分子機構におけるTP53INP1の意義

演者 中谷 直喜(金沢医大・腫瘍内科学)
共同演者 島崎 猛夫(金沢医大・腫瘍内科学), 元雄 良治(金沢医大・腫瘍内科学)
抄録 【目的】膵癌は難治癌であり、発見時に他臓器浸潤・転移が多く見られる。そのため化学療法が重要で塩酸ゲムシダビン(GEM)単剤投与が標準的治療の1つである。GEM単剤の奏効率は低く他剤併用も有効とは言い難い。そこで我々はTP53INP1 (tumor protein 53-induced nuclear protein 1)に着目した。膵発癌過程でTP53INP1は発現低下し、膵癌細胞PANC-1のGEM処理により発現誘導が示された。しかしGEM感受性の分子機構においてTP53INP1の役割は不明な点が多く、分子機構解明を目的とし本研究を行った。【方法】TP53INP1をノックアウトしたマウス胎児線維芽細胞 (INP1(-)細胞)とTP53INP1野生型細胞(INP1(+)細胞)を用い以下の実験を行った。両細胞のGEM用量-生存曲線の作成、細胞増殖能・GEM感受性を測定。次にフローサイトメトリー(FCM)を用いGEM処理後の細胞周期、細胞周期関連因子であるp21、p53のmRNA・蛋白発現を解析。【結果】GEM感受性はINP1(+)細胞に比しINP1(-)細胞が有意に高かった(P<0.05)。以下は全てGEM処理後の結果。FCM解析によりINP1(+)細胞はG2/M期で細胞周期が停止。一方、INP1(-)細胞G2/M期チェックポイントは正常に働かずDNA修復なく細胞周期の進行、アポトーシスを認めた。次にp21のmRNAと蛋白発現を解析した。p21 mRNA、蛋白がINP1(+)細胞に比較してINP1(-)細胞はGEM処理前後で有意に発現低下(P<0.05)。一方、INP1(-), (+)細胞のGEM処理・非処理群でp53蛋白発現を検出。【総括・結論】今回INP1(-)細胞ではGEM感受性増強を明らかにした。その機序はmRNA・蛋白レベルでp21発現低下の関与が示唆される。INP1(-)細胞では細胞周期G2/M期のチェックポイント機能破綻を明らかにした。更にINP1(-)細胞ではDNA損傷のまま複製を繰り返しアポトーシスに至ったと推定される。既にp21発現はp53による制御が知られているが、本研究ではp21がp53と無関係な制御が示唆された。以上からINP1(-)細胞ではGEM感受性が増強、GEM感受性にp21発現の関連が示唆された。今後は特にp21関連シグナル伝達経路の解析が重要と考えられる。
索引用語 TP53INP1, 塩酸ゲムシタビン