セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

膵臓-基礎1

タイトル 消P-514:

炎症と消化器癌~NF-κBを中心とした炎症性サイトカンネットワークと腫瘍血管新生

演者 松尾 洋一(名古屋市立大大学院・消化器外科学)
共同演者 越智 靖夫(名古屋市立大大学院・消化器外科学), 小出 修司(名古屋市立大大学院・消化器外科学), 舟橋 整(名古屋市立大大学院・消化器外科学), 岡田 祐二(名古屋市立大大学院・消化器外科学), 竹山 廣光(名古屋市立大大学院・消化器外科学)
抄録 【目的】我々は腫瘍血管新生に関わる炎症性サイトカインの役割を報告してきた(Pancreas 2004, MCR 2009).一方,炎症性転写因子であるNF-κBはさまざまな消化器癌で腫瘍の増殖,血管新生に関与していることが報告されている.我々はNF-κB のinducerの一つであるIL-1αが高血管新生株のみに発現していることを確認しており(Dig. Dis. Sci. 2010),腫瘍血管新生に対するNF-κBを中心とした炎症性サイトカインネットワークの関与を検討した.【方法】1)in vitro angiogenesis assay で消化器癌を高血管新生株(HA),低血管新生株(LA)に分類し, IL-1αの発現の差異をRT-PCRとELISAで確認した.2)膵癌でHA(PHA)とLA(PLA)のNF-κBの発現の差異をEMSAで確認した.3) PHAとPLAの血管新生因子CXCL8の発現の差異をELISAで比較し,NF-κB inhibitorによる変化を検討した.4)膵癌と線維芽細胞(FB)の共培養モデルを用いて,腫瘍由来CXCL8発現とFB由来のCXCL12発現の変化をELISAで検討した.5) NF-κBまたはサイトカインを抑制して血管新生能の変化を検討した.6)マウス膵癌同所移植モデルでCXCR2 Ab (CXCL8 receptor抗体)が腫瘍の血管新生に及ぼす効果を検討した.【結果】1) HAのみIL-1αが発現していた.2)PHAでNF-κBが強発現していた.3)PHAでCXC8発現が高く,NF-κBの抑制により低下した.4)膵癌とFBの共培養により,腫瘍由来CXC8およびFB由来CXCL12の発現が増強した.5) NF-κBまたはサイトカイン抑制により腫瘍血管新生は低下した.6)in vivoの検討でもCXCR2 Abが膵癌の血管新生を有意に抑制した.【結語】消化器癌では, NF-κBの発現が血管新生に関与しており,それには炎症性サイトカンが重要な役割をしていることが示唆された.NF-κBの抑制および炎症性サイトカンネットワークの中心的役割を果たすCXCL8の抑制(CXCR2 Ab)が腫瘍血管新生を抑制することより,治療への応用の可能性が考えられた.
索引用語 炎症, サイトカイン