セッション情報 |
パネルディスカッション5(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)
消化器癌と酸化ストレス
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タイトル |
肝PD5-2:HCVコアタンパクによるマイトファジーの抑制
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演者 |
原 裕一(川崎医大・肝胆膵内科) |
共同演者 |
仁科 惣治(川崎医大・肝胆膵内科), 日野 啓輔(川崎医大・肝胆膵内科) |
抄録 |
【目的】我々は肝発癌過程でのHCVタンパクによるミトコンドリア障害と酸化ストレスの亢進について報告してきた。今回HCVタンパクが障害ミトコンドリアの排除機構(mitophagy)を抑制することで酸化ストレスをさらに増強し肝発癌を促進させるのではないかいう仮説のもと、HCVタンパクがmitophagyに及ぼす分子機構について検討した。【方法】HCV全遺伝子が組み込まれたreplicon cell(OR-6)とそのcured cellにcarbony cyanide m-chlorophenylhydrazone (CCCP)を添加し、mitophagy制御分子の解析を行った。in vivoではHCV全遺伝子が組み込まれたトランスジェニックマウス(HCVTgM)とコントロールマウス(C57BL/6j)を用いて同様の解析を行った。【結果】Mitophagyの機構は、ミトコンドリア膜電位の低下に伴いPINK1がParkinをリン酸化してミトコンドリアへ局在させ、基質の一つであるp62とユビキチンがミトコンドリアに結合しautophagyにより消化される。replicon cellはcured cell に比べてLC3-IIの発現低下、p62の発現増加を認め、電子顕微鏡では有意にatuphagosomeの形成が抑制された。Parkinはそのリン酸化は抑制されることなくミトコンドリアへの局在が著明に抑制された。HCVタンパクとParkinの共免疫沈降ではコアタンパクとParkinの結合のみが確認された。さらにsiRNAによりreplicon cellでのコアタンパクの発現を抑制するとCCCP添加後もParkinのミトコンドリアへの局在が確認された。コアタンパクとParkinの結合部位を調べるためにParkinをN末端側の1-236塩基対、C末端側の237-465塩基対で分けた組み替えタンパクを作成しTwo-hybrid-assayを行うと、コアタンパクはParkinのミトコンドリア結合配列を含有するN末端側と結合することが明らかとなった。HCV TgMの肝臓においてもParkinのミトコンドリアへの局在は抑制された。【考察】HCVコアタンパクはミトコンドリアを障害して酸化ストレスを亢進させる一方で、mitophagyを阻害し、障害されたミトコンドリアの排除を抑制している点は肝発癌機構における重要な知見と考えられる。 |
索引用語 |
HCV, マイトファジー |