セッション情報 |
ポスターセッション(消化器病学会)
膵臓-腫瘍1
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タイトル |
消P-536:切除不能進行膵癌に対するGSK3βを標的とした新規治療戦略
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演者 |
島崎 猛夫(金沢医大・腫瘍内科学DELIMITER金沢大がん進展制御研究所・腫瘍制御DELIMITER金沢医大病院・集学的がん治療センター) |
共同演者 |
川上 和之(金沢大がん進展制御研究所・腫瘍制御), 上田 順彦(金沢医大・一般・消化器外科学), 小坂 健夫(金沢医大・一般・消化器外科学), 源 利成(金沢大がん進展制御研究所・腫瘍制御), 元雄 良治(金沢医大・腫瘍内科学DELIMITER金沢医大病院・集学的がん治療センター) |
抄録 |
膵癌の多くは高度の局所浸潤や遠隔転移のため切除不能の状態で診断される.ゲムシタビン(GEM)による化学療法が切除不能膵癌の標準治療とされているが,GEM単剤療法を大きく凌駕する治療法は報告されていない.膵癌に対して現在,細胞増殖因子や血管新生因子経路を標的とする治療法の第3相臨床試験が実施されているが,その効果は期待とは程遠い状態であり,新たな標的分子の同定が望まれている.Glycogen synthase kinase (GSK)-3βは細胞生命現象の根幹に関わるセリン・スレオニンキナーゼである.我々は,GSK3βの過剰発現や酵素活性亢進が腫瘍細胞の生存や増殖を維持・推進するという,Wnt経路抑制機能とは異なるがん促進作用を発見した.そして,GSK3β阻害による抗腫瘍効果を消化器癌や,膵癌,脳膠芽腫などの難治がん培養細胞と担がん動物モデルで実証し,本酵素が新しいがん治療標的であると提唱している.その作用メカニズムは,細胞周期,細胞不死化,上皮間葉転換,浸潤,代謝特性など癌細胞の根源的生物特性の制御によることを見出した.ついで,GSK3β活性阻害が膵癌細胞のGEM感受性を相乗的に高め,その分子機構に細胞周期制御経路の誘導やTP53INP1によるDNA修復機構が関与していることを明らかにした.また,GEMにより膵癌細胞に誘導される遺伝子および蛋白質発現の網羅的解析を行い,膵癌のGEM耐性と浸潤への関与が推定される新規分子を同定した.我々の研究成果にもとづいて,切除不能進行膵癌の最適な治療戦略を構築するために,GSK3β阻害薬とGEMの併用療法の臨床研究を開始した.我々は既に同様の薬剤の併用による再発神経膠芽腫化学療法の医師主導臨床研究を開始し,その安全性と良好な治療効果を得ている.GEMとGSK3β阻害薬の併用療法は,膵癌治療におけるGEM単剤療法の壁を乗り越える可能性が期待される. |
索引用語 |
膵癌, GSK3β |