セッション情報 パネルディスカッション5(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

消化器癌と酸化ストレス

タイトル 肝PD5-3:

C型肝炎からの肝発癌における酸化的DNA損傷修復遺伝子SNPの関与

演者 宮西 浩嗣(札幌医大・4内科)
共同演者 小船 雅義(札幌医大・4内科), 加藤 淳二(札幌医大・4内科)
抄録 【目的】近年、持続慢性炎症によって惹起される発癌過程には酸化的DNA損傷が関与する可能性が想定されている。特にC型肝炎においては肝細胞に蓄積した鉄の関与が注目され、鉄イオンがFenton反応等を介してヒドロキシルラジカル等のROSの産生を促進し、酸化的DNA損傷を増強することが知られている。われわれは、C型慢性肝炎およびHCCの肝組織中に8-hydroxy-deoxyguanosine(8-OHdG)が著明に蓄積していることを報告し、実際にこれが接着分子、転写因子および血管新生因子などをはじめとする101種類の遺伝子に存在することをChIP on chipアッセイにより明らかにしてきた。またC型肝炎からの肝発癌ハイリスク群のマーカーとして酸化的DNA損傷の修復系遺伝子群の異常の有無を検討し、MUTYHのSNPであるrs3219487のminor allele保有が有意な発癌危険因子であることを見出してきた。本研究では【方法】C型肝炎患者96例の末梢血リンパ球から高分子DNAを抽出し、MUTYH遺伝子のSNPs解析をdirect sequenceにより行った。また末梢血単核球からRNAを抽出し、real time RT-PCRによりMUTYH発現の解析を行うとともにMUTYH promoterとSNP配列を含むLuc発現ベクターを作製し、同SNPがmRNA発現に及ぼす影響を検索した。【成績】HCC患者において有意にminor allele保有頻度の高い(p=0.0039)MUTYHのSNPについて患者背景因子を加えて多変量解析を行った結果、年齢、性と共に同SNPが独立した肝癌危険因子として同定された。同SNPのMinor allele保有者では、MUTYHのRNA量が低下していた。さらに、HCC未発症群を2年間追跡したところ同SNPのMinor allele保有者の30%に肝癌が発症し非保有者(3.3%)に比べ高い肝発癌率が認められた。Minor allele配列の挿入によりLuc活性の有意な低下が認められた。【結論】8-OHdG損傷のDNA修復酵素であるMUTYHの発現低下により、種々の遺伝子損傷が蓄積することが肝発癌の一因と考えられた。同SNPのminor allele保有者は、肝発癌のハイリスク群となり得ることが示唆された。
索引用語 C型肝炎, 肝癌