セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

膵臓-腫瘍3

タイトル 消P-545:

膵神経内分泌腫瘍切除例の検討:2010年WHO分類改訂に伴って

演者 矢田 一宏(大分大・消化器外科)
共同演者 平下 禎二郎(大分大・消化器外科), 太田 正之(大分大・消化器外科), 北野 正剛(大分大・消化器外科)
抄録 【背景】神経内分泌腫瘍(NET)はWHO分類により,生物学的性質や機能的活性が異なる複数のタイプに分類される.従来,転移・腫瘍径・血管や周囲臓器への浸潤などの臨床的要素を考慮し,3種類(高分化型神経内分泌腫瘍(良性および低悪性度),高分化型神経内分泌癌,低分化型神経内分泌癌)に分類されていた.しかし2010年10月のWHO分類の改訂にて臨床的要素が省かれ,Grading(G1,G2,G3)導入により分類が簡素化された.新分類では細胞分裂像数もしくはKi-67標識率にのみによって分類されている.【目的および方法】1984年から2010年12月の間に当科で切除した膵神経内分泌腫瘍(PNET)切除22例について細胞分裂像数もしくはKi-67標識率をもとに3段階のGradingに分け,新WHO分類による再評価を行った.【結果】22例中G1:17例(77%),G2:4例(18%),G3:1例(5%)であった.以前の分類で高分化型神経内分泌腫瘍(良性)と診断された13例は全例G1に,また低分化型神経内分泌癌と診断された1例はG3に分類された.しかし高分化型神経内分泌腫瘍(低悪性度)2例中1例(50%)がG2に,また高分化型神経内分泌癌7例中3例(43%)がG1となった.そこで以前の分類で高分化型神経内分泌癌と診断され今回G1となった1例を提示する.<症例>76歳男性.2008年10月に膵頭部腫瘍に対して幽門輪温存膵頭十二指腸切除術が施行された.2個のリンパ節転移を伴っており,病理組織診断はグルカゴン産生性の高分化型内分泌癌との診断であった.核分裂像数は10視野中2個未満,Ki-67 0.7%であり,新分類ではG1に分類された.術後補助化学療法として塩酸ゲムシタビン及びオクトレオチドを2年継続後,現在外来経過観察中である.【結語】今回改訂のGradingにより組織診断による分類自体は簡素化されたものの,従来の臨床的悪性度の高いとされていた症例が過小評価される可能性がある.TNM分類も考慮して,より正確な予後予測を行うことが重要と考えられた.
索引用語 膵臓, 神経内分泌腫瘍