抄録 |
【目的】膵癌の治療方針決定には局所進展ならびに遠隔転移の的確な診断が重要である。本研究の目的は、術前PET検査の診断精度に基づき、その臨床的役割および問題点を再検討することである。【対象と方法】2008年1月から2010年12月までの当院の膵癌患者454人中、PETを施行した214人(切除92、非切除122)を対象とした。検討項目は、1) 原発巣の検出率、2) 肝転移診断におけるEOBプリモビストを用いた造影MRIとの比較、3) CT・MRIで肝転移陰性とされた症例におけるPETの遠隔転移・他臓器腫瘍診断能であった。最終診断は病理あるいは画像を含む経過で決定した。【結果】1) 原発巣に対するPETの感度は88.8% (190/214)であり、腫瘍径別ではTS1 66.7%(22/33)、TS2 90%(117/130)、TS3 100%(35/35)、TS4 100%(14/14)と腫瘍径が小さい程腫瘍同定は困難であった。2) EOB-MRIを施行した144人で比較したところ、PETの感度、特異度、陽性的中率(PPV)、陰性的中率(NPV)、正診率は、26.1%, 99.2%, 85.7%, 87.6%, 87.5%、EOB-MRIは69.6%, 95.9%, 76.2%, 94.3%, 91.7%であった。3) CT・MRIで肝転移陰性とされた126人のうち、PETにより遠隔転移または他臓器腫瘍が11人(8.7%)で同定された(第3群リンパ節転移3、腹膜播種2、骨転移1、臍転移1、肺癌2、甲状腺oncocytoma1、大腸癌1)。PETで左鎖骨上リンパ節転移が疑われた1例は組織学的に転移をみとめず偽陽性であった。また、すべての画像で遠隔転移陰性と診断され、手術に臨んだ109例中17例(15.6%)は、術中に遠隔転移巣が同定された(肝転移6、傍大動脈リンパ節転移6、腹膜播種5)。【結語】膵癌の術前診断におけるPET検査は、原発巣の描出能は比較的良好だが、最も重要となる肝転移診断には限界があり、肝転移検索にはEOB-MRIが有用と考えられた。肝以外の遠隔転移診断ではPETは有用と考えられたが、PET上の偽陽性・偽陰性病変も多く、今後に課題を残す。 |