セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

膵臓-IPMN2

タイトル 消P-566:

信号伝達系関連分子異常からみた膵管内乳頭粘液性腫瘍と浸潤癌との関連

演者 久保木 友子(東京女子医大・消化器内科)
共同演者 白鳥 敬子(東京女子医大・消化器内科), 羽鳥 隆(東京女子医大・消化器外科), 山本 雅一(東京女子医大・消化器外科), 古川 徹(東京女子医大統合医科学研究所DELIMITER東京女子医大病院・病理診断科)
抄録 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)は膵管癌の前駆病変と見なされている。我々はIPMNにおいて信号伝達系関連分子異常を解析し,IPMNの特徴的バリエーションと浸潤癌との関連について検討した。【対象・方法】IPMN 119例において、KRASEGFRBRAFPIK3CA変異及びEGFR、p-EGFR、MAPK、p-MAPK、AKT、p-AKT、βcatenin、SMAD4、TP53蛋白発現を検索し,組織亜型、予後を含む臨床病理徴候との関連を解析した。【結果】KRAS変異は47.9%に認め、IPMN亜型である胃型と膵胆管型に有意に関連していた。またSMAD4、TP53の発現異常は11.8%、10.9%に認め、これらは膵胆管型および異型度に有意に関連していた。浸潤癌35例ではKRAS変異が管状腺癌に有意に関連していた。蛋白発現頻度はEGFR 89.9%、p-EGFR 73.1%、MAPK 100%、p-MAPK 89.9%、AKT 81.5%、p-AKT 3.5%, βcatenin核内蓄積16.8%であり、EGFR発現は異型度に、pAKTは好酸性細胞型に、β-cateninの異常は腸型および異型度に有意に関連していた。BRAF変異は好酸性細胞型1例に認めた。PIK3CA及びEGFR変異は認めなかった。生存解析では、SMAD4及びTP53の発現異常例で有意に生存率の低下を認めたがKRAS変異の有無では有意差はなかった。【結論】IPMNはEGFR-RAS-MAPK経路の活性化を基盤に発生し,KRAS変異にSMAD4やTP53の多段階的な分子異常が加わる事が選択圧力となって胃型から膵胆管上皮型への進展、さらには浸潤癌の発生に至る事が示唆された。これらの分子異常指標とした診断治療法の開発が浸潤癌早期発見の鍵となるものと考えられる。
索引用語 膵管内乳頭粘液性腫瘍, 分子異常