共同演者 |
夏越 祥次(鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 腫瘍制御学消化器外科学), 奥村 浩(鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 腫瘍制御学消化器外科学), 松本 正隆(鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 腫瘍制御学消化器外科学), 花園 幸一(鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 腫瘍制御学消化器外科学), 瀬戸山 徹郎(鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 腫瘍制御学消化器外科学), 大脇 哲洋(鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 腫瘍制御学消化器外科学), 柳 政行(鹿児島市医師会病院外科), 愛甲 孝(鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 腫瘍制御学消化器外科学) |
抄録 |
様々な臓器でG-CSF産生腫瘍の報告例が散見されるが,G-CSF産生食道腫瘍の報告例は稀である.今回,高熱と白血球上昇で白血病を含め術前診断に難渋したG-CSF産生食道癌肉腫の1切除例を経験したので報告する.症例は62歳の男性.胸部つかえ感を主訴に近医を受診し食道癌と診断された.既往歴に糖尿病があった.前医に入院後より発熱,白血球数増多(14400/μl),CRP上昇(4.8mg/dl)を認めたが,明らかな感染巣は指摘できなかった.造血器腫瘍合併食道癌が疑われ当院へ転院し骨髄穿刺を施行したところ,過形成骨髄所見とY染色体喪失(4細胞/20細胞中)があったが,Ph染色体は認められなかった.慢性好中球性白血病合併食道癌の診断でRanimustineによる化学療法を先行し手術の方針とした.その後,血中G-CSF値の上昇(108pg/ml),食道腫瘍生検組織の抗G-CSF抗体による免疫染色において陽性所見が認められ,G-CSF産生腫瘍と診断し,右開胸食道亜全摘術を施行した.術後,白血球数は次第に低下し,また血中G-CSF値も3病日には18.8pg/mlと低下した.切除標本の肉眼所見は隆起型(1p)で,病理組織学的には低分化の扁平上皮癌と癌肉腫が混在するいわゆる食道癌肉腫で,深達度pT2, N1, M0, Stage IIであった.今回,術前に造血器腫瘍合併食道癌との鑑別に苦慮したが,発熱,白血球増多,炎症所見を認めた場合には,G-CSF産生腫瘍の存在を念頭におくべきである.これまでに自験例を含め6例のG-CSF産生食道癌肉腫の報告がみられており,文献的考察を含めて報告する. |