セッション情報 シンポジウム1(肝臓学会・消化器病学会合同)

分子標的治療の限界を超える新しい肝癌治療法の開発

タイトル 肝S1-7:

ソラフェニブ治療後の肝動注化学療法(HAIC)は進行肝細胞癌の予後に寄与する

演者 平峯 靖也(鹿児島厚生連病院・内科)
共同演者 宇都 浩文(鹿児島大大学院・消化器疾患・生活習慣病学), 坪内 博仁(鹿児島大大学院・消化器疾患・生活習慣病学)
抄録 【目的】進行肝細胞癌に対するソラフェニブもしくはHAICの効果を後ろ向きに比較し、治療選択が予後に影響するかを検討した。【対象&方法】2004年7月から2011年12月までにHAIC(74例)もしくはソラフェニブ(40例)により治療を開始した進行肝細胞癌を対象とした。Child-Pugh分類A、Stage III~IVB(肝外病変は1cm未満かつ2個以下)で、後療法の有無によりHAIC→(後療法)有:n=11、 HAIC→無:n=63、ソラフェニブ→有:n=19、ソラフェニブ→無:n=21の4群に分類した。HAICはCisplatin、Mitomycin-C、Epirubicinの3剤を単回動注し、効果をみてlow dose FP療法へ変更した。ソラフェニブは800もしくは400mg/日で開始し、適時増量もしくは減量した。【成績】HAIC開始群とソラフェニブ開始群において、奏効率に有意差を認めたが(24.3%vs. 5.0%、P=0.01)、腫瘍制御率と生存率には有意差はなかった。HAIC群は病勢の増悪で治療が中止される症例が多く、後療法の施行率は14.9%(11/74例)で、ソラフェニブ群は過半数(22例:55%)が副作用で中止され、後療法の施行率は47.5%(19/40例)であった。予後に寄与する因子を多変量解析すると、飲酒歴、T-Bil、PIVKA-II、治療奏効の有無、後療法の有無に有意差を認め、ソラフェニブ→無群は最も高い予後危険因子であった([HR];6.49、P<0.001 vs. ソラフェニブ→有群)。また、ソラフェニブ→有群の生存率は他の3群に比較して有意に良好であり、HAIC群は後療法の有無で生存率に有意差が無かった。さらに、ソラフェニブの効果やその後のHAIC後療法に寄与する因子を解析した結果、いずれも初期体重換算投与量が有意な独立因子であった。【結論】進行肝細胞癌では、体重を指標にソラフェニブを投与し、長期投与後にHAICに移行することが、予後改善に寄与できる可能性がある。
索引用語 ソラフェニブ, HAIC