抄録 |
【目的】膵切除術は侵襲が高く、術後合併症の頻度も未だ高率である。さらに高齢者に対する膵切除術の頻度は増加しているが、術前評価に明確な基準はない。今回われわれは、POSSUMスコアとE-PASSを用いて膵切除術を評価したので報告する。【方法】対象は2003年1月より2010年12月までに当院で施行したPD279例とDP122例の合計401例とした。80歳以上の20例を高齢者群とし、79歳以下の381例を非高齢者群とし術後合併症の頻度、術前評価について比較検討した。【成績】高齢者群の平均年齢は81.5歳で、男性13例、女性7例。既往歴は糖尿病8例、喫煙9例、心疾患9例、肺疾患2例、脳疾患1例であった。疾患名は膵癌13例、十二指腸乳頭部癌4例、胆管癌2例、その他1例で悪性19例、良性1例であった。手術は全例が待機手術で、術式はPD10例、DP10例であった。ASA分類は1:5例、2:12例、3:3例。平均手術時間は256±99.8分、平均術中出血量は1083±1416.9ml。術後合併症は13例(65%)に認め、内容(重複あり)は膵液瘻7例、肺炎4例、腹腔内膿瘍3例、胆汁漏、せん妄、乳糜腹水、結腸縫合不全を各1例に認めた。肺炎と結腸縫合不全を認めた各症例が敗血症となり2例(10%)が在院死となった。平均在院日数は30.4±24.6日。非高齢者群とASA分類、手術時間、術中出血量、術中輸血、術後合併症、在院日数など比較検討したが統計学的に有意差は認めなかった。高齢者群のPOSSUMスコアはPhysioogic Score(PS):24.7±4.6、Operative Score(OS):18.5±3.8、Morbidity:77.8%、Mortality:31.6%。E-PASSは術前リスクスコア(PRS):0.50±0.13、手術侵襲スコア(SSS):0.46±0.39、総合リスクスコア(CRS):0.60±0.43。非高齢者群と比較すると手術因子であるOSとSSS以外は有意差を持って高齢者群が高値であった。両群においてMortalityは実際より高値を示し指標とはならなかったが、MorbidityとCRSは合併症の発生頻度と相関する傾向を示した。【結論】80歳以上の高齢者の膵切除術は79歳以下と同等の術後経過であった。POSSUMスコアやE-PASSを用いた術前評価は膵切除後の合併症予測に有用であった。 |