セッション情報 ワークショップ2

タイトル 研-06:

先天性全身性脂肪萎縮症に発症した十二指腸潰瘍穿孔の一例

演者 平野 勝治(長崎大学大学院 移植・消化器外科)
共同演者 米田 晃(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 伊藤 信一郎(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 永田 康浩(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 山崎 浩則(長崎大学附属病院 内分泌代謝内科), 兼松 隆之(長崎大学大学院 移植・消化器外科)
抄録 【はじめに】先天性全身性脂肪萎縮症は、全身の脂肪組織が欠如する先天性代謝性異常である。この病態に十二指腸潰瘍の穿孔を認めた。この特殊例に対して我々が行った治療について報告する。【症例】29歳男性。幼少時より先天性全身性脂肪萎縮症の診断を受け、当院小児科と内科で経過観察中であった。2006年6月より心窩部痛に対しH2ブロッカーを処方されていたが、8月4日朝食後突然腹痛が出現、当院救急外来を受診した。腹部全体に圧痛と、腹膜刺激症状を認めた。腹部CTで腹腔内遊離ガスと十二指腸壁の肥厚、および左右横隔膜下とダグラス窩に腹水貯留を認め、十二指腸潰瘍穿孔による汎発性腹膜炎と診断し緊急開腹手術を行った。腹腔内に膿性腹水を認め、十二指腸球部前壁にピンホールの穿孔部を確認した。患者は全身の脂肪組織が萎縮し、大網は血管と線維性の膜からなり被覆への使用を断念した。そこで、肝円索を末梢側で結紮切離し、遊離した後に穿孔部を被覆した。術後は良好に経過し14日目に行った上部消化管内視鏡で十二指腸球部前壁に治癒期にある潰瘍を認めた。H. pylori菌は陽性であった。【まとめ】先天性全身性脂肪萎縮症の本例では大網にも脂肪組織がなく、現在一般的に施行されている消化性潰瘍穿孔例での大網充填や被覆術は施行できないと考えられた。そこで今回、大網の代用として臍静脈の遺残物である肝円索を用いて穿孔部を被覆した。術後経過は良好で被覆組織として特に問題はなかった。胃十二指腸潰瘍穿孔症例において、手術既往や炎症による大網短縮・癒着などで大網充填や被覆が困難な場合は、肝円索を用いる事が有効である。また、本術式は腹腔鏡下手術においても充分応用可能と考えられる。
索引用語 先天性全身性脂肪萎縮症, 十二指腸潰瘍穿孔